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防音室で先輩に襲われて…
第12章 余韻

「こ、高校の先輩と一緒にお買い物してたの」

「高校の先輩……?」

 母の声に、ほんの少しだけ警戒の色が滲む。視線が、乃ノ花の腕に抱えた紙袋へと移った。

「それ、何を持ってるの?」

「……下着、なの」

「下着なら充分あるでしょう。ちょっと見せてごらんなさい」

「そうじゃなくて!その、大人用のがほしくて」

「……」

 乃ノ花は震える手で袋を開け、買ったばかりのブラレットとショーツをそっと取り出した。リビングの照明の下で淡い布地が柔らかく光を反射した。

 母は一瞬、言葉を失ったように目を丸くした。

 沈黙が、数秒だけ重く落ちる。


「……まぁ、いいんじゃない」

 意外なほど穏やかな声音に、乃ノ花は思わず母を見上げた。

 予想していた叱責が来ないことに拍子抜けしてしまう。

「お小遣い、ちょっと多めに渡しておくから、今度別のも買ってきなさい。でも遊んだ分はちゃんと宿題を早めに済ませることよ。わかった?」

「うん」

 怒られる覚悟が、ふいに抜け落ちてしまった。母はもう編み物に戻り、テレビの音に耳を傾けている。その横顔は、いつもの母のままで、特別に変わったところは何もなかった。



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