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Night BAR
第1章 BAR
このバーテンダーだって

せっかくのお客なんだもの

また来店してもらうための

うまい誘い文句だってことくらい

分かってる。

でも、そんな言葉にさえ

救われた気になってしまうのは

それほどにも

心がくじけそうになっているのかもしれない。

私は深いため息をつきそうになるのを

カクテルを口に運び、ごまかした。





カクテルを呑み終わると、

軽くアルコールが効いてきたのか

頬が熱い。


「ごちそうさまでした。」


そう言うと


「いいえ。こちらこそご来店ありがとうございます。」


と微笑むバーテンダー。


なんだかたった30分程度の

この時間に

この人のおかげでだいぶか

心が軽い気がする。

お酒のせいなのかしら。



「おいくらですか?」

お代を払おうと、財布を鞄から出すと、

「結構よ」


「え?」


バーテンダーの思いもよらない言葉に驚いた。


「いいの。その代わりまたくるのよ。」


そう言ってバーテンダーは、

軽く手を振り、

奥に入ってしまった。

困り果てて立ちすくんでいると、

さっきの眼鏡をかけたバーテンダーがやってきた。


「大丈夫ですよ。ミサさんがそう言ってるので、
今回はサービスです。
またのご来店お待ちしております。」


そう言って一礼され、

なんだか申し訳の無い気持ちで

いっぱいになりながらも

私は言われるがままに、

店を後にした。







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