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海に漂う星屑のように
第2章 宗像師月
たしかに俺は刑事なので、被疑者の人着(いわゆる顔立ちや服装のこと)を瞬時に記憶し、言葉にすることには慣れている。犯人を追尾している時、無線で、どういう人間を追いかけてるかを言う必要があるからだ。

だが、似合う、似合わないなんて、そんな主観的なことを無線で吹く(言う)ことなんてありはしない。
だが、ここで『知るか』なんて答えたら、またツミホロボシがどうとか言うことは目に見えているので、とりあえず必死になんと言うか考えてみる。

どや、という顔で目の前に立つ陽菜多。

黒のステンコートに、くすんだ赤色のセーター

そんな服を着ている、少し色素の薄い顔立ちの彼は、確かに凛とした冬の木立を俺に連想させた。そして、そこに白っぽいふわりとしたモヘアのマフラーはまるで・・・

「雪」
「え?」
咄嗟に言葉が出てしまった。
それは、一晩中降った雪、まだ誰も足跡をつけていない純白のそれに思えた。

「どういう意味?」
陽菜多がなおも食い下がってくる。無自覚なのだろうか、距離が妙に近い。
俺は若干顔を背けがちにしながら、しょうがなく、思ったことを口にした。

「冬・・・の雪みたいだって思ったから・・・」
ああっ!何言ってるだ、俺?
これ、似合うとか似合わないとかってのと話しズレてるだろ。

思ったときにはもう遅かった。
陽菜多の肩が、脱力したみたいに、ストンと落ちた気がした。

あ、また、ふざけんなとか言われるやつか、これ?

そう思って身構えたが、意外なことに、彼はくるりと鏡の方に向き直り、たった一言だけ言った。

「・・・雪か」

そして、端っこに付けられたプライスタグを見ているふうだった。
こ・・・これは!?

ヤな予感が、俺の背筋に走る。
「ちょ・・・」

声を掛ける前に、陽菜多が振り返り、にやりと笑った。

「これ、買って」・・・と。

その笑顔が、なんだか可愛らしいと思ってしまって、
俺はまた、軽く頭を振った。
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