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路地裏文化研究会
第12章 メモ
 今日の研究会は〇〇駅からそぞろ歩きの予定だ。

 歓迎会はいつの間にかああいう熱を帯びた流れになってしまって、あれから最初に顔を合わせたときは、お互い名残りのような気恥しい雰囲気もあったけど、文華堂の中村さんがうまくとりなしてくれて、ちょっとだけあったぎこちない空気は思ったよりもはやく消えていった。

 歓迎会の熱を知ってしまったものの、それでも、わたしにはわたしの小心からくる分別があり、おじさんたちにはおじさんたちの年齢なりの分別があって、なし崩し的な関係になってしまうのはよくないという暗黙の了解のようなものが共有されているようだった。

 そのようなこともあって、研究会も『夜の部』だけになるのは避けるようになっている。『昼の部』がいささかお飾りめいて見えるとしても、それはそれで構わないという感じになっている。

 『夜の部』がお開きになろうとするとき、次回の『昼の部』の内容が話題になる。

 「奈津子さんは何かアイデアはあるかな?」
 「そうですね…」

 部屋の隅に積まれた雑誌たちが目に入る。

 「『白ポスト』に興味があります」
 「おお、白ポスト。いいね」
 「文華堂は白ポストから拾ってきてるんだろ?」
 「馬鹿なこと言っちゃ困りますね」
 「冗談だよ」
 「でも、奈津子ちゃん、なんで『白ポスト』?」

 そう思われるのも無理はありませんよね。

 「うまく言えないんですけど、なんというか、愛おしくて」
 「愛おしい…、新鮮な評価だね」
 「わかるような気もするがね。行き場を喪った本を受け容れてくれるポスト」
 「文華堂も白ポストみたいなものか」
 「大半はまともな本を扱っているつもりですが。まあ、古書ってのは持ち主が手放したものだととらえればおっしゃるとおりですけどね。ああいう本を全く扱っていない訳じゃないんだから、甘んじてお受けしますよ」
 「この辺だとどこにある? 昔はあっちこっちにあったような気はするが」
 「すぐに見つかるものを探してもつまらんだろうが、〇〇の駅前にはあったんじゃないかな」
 「うむ、あったな」
 「あれって誰が管理してるんだい? 役所か?」
 「さあなあ。きいてみるか?」
 「まあ、俺たちがきいてみてもただただ胡散臭いだけだよな」
 「奈津子ちゃんなら対応も違うと思うぜ」

 どういう顔をしてお役所に行ったらいいのでしょう。
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