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夜空に煌めくアラベスク
第10章 やぎ座の女
また今年もこの日がやって来た。
11月11日…
1並びの10年前のこの日に夫の宗一の乗る車が、トラックとの正面衝突で呆気なくこの世を去った。
夫の命日にお墓参りをしている未亡人の和代。
そこへ墓苑の砂利道を小気味良い音を立てながら、一人の男が墓前に線香を立てて合掌する和代の元へ近づいてきた。
背後に立つ男の影に気づき、ふと、後ろを振り返る和代。
「あら、宗二さん…来てくれたの?」
「お義姉さん、久しぶり…兄貴の命日ですからね
ちゃんと覚えていましたよ」
手を合わせてやってくださいな
そう言って和代は立ち上がり、宗二と入れ替わってあげる。
亡くなった夫の宗一と弟の宗二…
一卵性双生児の二人は顔はもちろんの事、その背格好まで、何から何まで瓜二つだった。
合掌を終えた宗二が立ち上がる。
墓石の前に立ち尽くす姿を見ると、夫の宗一があの世から霊となってこの世に戻ってきてくれた錯覚に陥る。
「お義姉さん、食事は済ませた?」
合掌を終えて墓石に水を掛けながら、振り向きもせずに宗二がそのように訊ねる。
「いえ…まだ…」
「じゃあ…どこかで食事をしながら兄貴に献杯しませんか?」
それは大助かりだった。
墓苑から近くの駅までのバスの本数が少ないので、送ってもらおうと思った。

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