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『春の嵐』
第3章 序章。
馬酔木が園庭の隅で咲いている。

そして、淡い梅の花の薫り。木瓜の真っ赤な花が咲き誇る。

そんな校庭。

中学三年生の春。それは、卒業を控えた春。

大学附属の小中高十二年一貫校の生徒にとって、それは単なる通過点。

4月からも同じ学び舎で、同じ顔触れで十年目が始まる。

ハズだった・・・。

「宇垣、学校やめるってよ」

宇垣梨々香。学園のアイドル。学力優秀で、大人びた雰囲気で、男勝りな性格。

宇垣が卒業して、他校に進学するという噂が三月の上旬に学年内どころか、他学年にも伝わり、高校まで波及。

十月の内部進学テストを受けていただけに、誰しもが内部進学するものだと思っていた宇垣が、まさかの離脱。

「稲葉も、やめるってよ」

稲葉恵樹。学年の弟。学年の女子の弟のような存在で、可愛い系男子。中学の修学旅行でも、何度か入場口で、係員から子供料金を請求されたことがあるくらいの童顔男子。

教室に、学年の生徒間に、漂う空気・・・。

やはり、あの二人・・・。

小学校時代。あの二人は、いつもハグしていて抱き合っていた。

身体が大きい梨々香が恵樹を抱き上げるような感じの抱擁。

梨々香と同じ附属の幼稚園から来た男子たちは、自分たちのアイドルを取られて膨れっ面だった。

しかし、情報は漏れて、進学先は、まったく違う高校だとわかった。

二人が小学校時代からずっと十年にわたって愛情を育んできたのではないかという疑いは晴れた。

そして、残ったのは、梨々香への憧れを持った男子生徒。

同じく、恵樹を慈しむ女子生徒。

しかし、それは・・・。
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