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『間違い』電話
第10章 『標的』
「尚子!」


薔薇の花束を引き摺りそうな感じで、ドンドン歩い行く。


以前来た和食屋のビルの付近で、ようやく止まった。


「賢ぅ〜!今日の日替わり定食、何かな?」


「あぁ…楽しみだな…」


振り向いた尚子の顔は…


目が笑ってなかった…。


地下に降りて、店の中に入ると平日よりは、お客が混んでいた。


店員に日替わりを頼み、お茶を飲んで一息吐く。


「本当に…薔薇で良かったのか…」


聞きながら尚子を見やると…


両手で湯飲みを力いっぱい握り、最初来た時みたいに空を見据えていた。


「尚子…どうした?」


あの花屋から、明らかに様子がおかしい…。


「賢…さっきの店員…どう思う?」


「店員…花屋の?」


「うん…」


尚子は相変わらず、正面をガン見したままだ。


「普通じゃない…まぁ…綺麗な人だったかな……」


「綺麗…」 


ギロリ……


尚子が凄い形相で、睨んできた…。


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