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『間違い』電話
第16章 『報復』
ザッバァーン!


波の音が荒々しく響き渡る。


俺と尚子はギリギリの所で佇み、絶壁を見下ろしていた。


「ふふふ…凄い…飲み込まれそうね…」


「あぁ…そうだな…」


何度見ても自然が作り出す光景は、圧巻としか言いようがなかった。


二人とも黙って打ち寄せる荒波を見詰め続ける。


時たま現れる渦潮に、吸い込まれそうな感覚が襲って足が竦みそうになった。


カッツン…カラカラ…


無意識に蹴飛ばした小石が断崖の下に落ちた。


「あ…」


たかが石ころなのに…
なんだか人生と重なりそうで、恐怖感がザワザワと胸の中を騒がせる。


「尚子…もう戻らないか…」


話し掛けても尚子は、微動だにしない。


「尚子…」


ゾクリ…


嫌な…予感がする。


慌てて周りを見渡すと、チラホラと観光客はいる様だ。


「尚子…風も強くなってきたし、もう移動しないか?」


やんわりと声を掛けると、スローモーションの様に振り向いた尚子は…


口元に三日月を浮かべていた。



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