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第16章 『報復』

ドックン…ドックン…


心拍数が早まるのが分かる。


「賢…どうしたの…」


尚子はゆっくり一歩ずつ…近付いてきた。


ドックン…ドックン…ドックン…


大丈夫…
落ち着くんだ…。


崖の淵には、そこそこ距離もあるし、俺より尚子の方がむしろ近いんだ…。
腕力だって絶対に男の俺の方が強いんだから。


思考をフル回転させて自分を奮い立たせるが、尚子の不敵な口元を見ると、金縛りにあったみたいに身体が言う事を利かない。


脂汗が額から流れ落ちた。


尚子は静かに腕を肩の高さまで上げて、俺の後ろをさして


「後ろの正面…だぁ〜れだぁ〜」


ニンマリ笑う。


なんだって…


「後ろ…」


まさか…共犯者が居るのか！？


ザッパァーン！！


波の音が爆発音に聞こえ…


『死』への恐怖が一気にのし掛かってきた。


「わぁぁぁぁぁぁっ！やめろっ！死にたくないっ！」


俺は発狂したかの様に、全身全霊で叫んだ。