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シアター"名画座"で逢いましょう
第12章 肥満女の誘惑
日菜子と別れて派出所に帰る道すがらも朝倉巡査の顔はニヤけていた。
もう会うこともないと思っていた日菜子と再会できたなんて、これはもう、天の采配以外の何ものでもないと思った。
もちろん日菜子と体を重ねることは不貞行為であり、決して誉められたものではない。
だが、民法上は許されない事とはいえ、刑法に触れる訳でもないのだから、罪の意識は全然感じていなかった。
派出所に帰り着くと愛川巡査の姿が見えない。
はて、どこに行ったのだろうと「ただいま巡回から戻りました」と声をかけると「ご苦労様でした」と仮眠室から声だけ聞いていればどれ程の美人だろうと思わせる可憐な声が返ってきた。
『おいおい、俺が巡回中なのをいいことに、一足お先に仮眠室で横になってるってか?』
まったく、今時の若い女は礼儀も何もあったものじゃないなと、一言、注意をしてやろうと仮眠室を覗き込んだ。
そこで朝倉が目にしたものは、脚立に登って今にも落ちそうにぐらぐらしている彼女の姿があった。
一瞬、彼女が自殺を図って首でも吊ろうかとしているのかと驚いた。
だが、それは杞憂であり、愛川巡査は仮眠室の蛍光灯を取り替えようとしているだけだった。
「何をしている?」
「あ、蛍光灯が切れかかっているので取り替えようと…」
そんなこと、言ってくれれば俺がするのに。
危なっかしくて見てられない。
「気を付けろよ」朝倉がそのように言う前に「きやっ!」と小さな悲鳴をあげて愛川巡査が脚立から足を滑らせて落ちそうになった。

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