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シアター"名画座"で逢いましょう
第16章 "名画座"の崩落
「この辺りまで来たんだ。ちょっと挨拶していこうか」
"名画座"近くの街の片隅にポツンと建っている派出所へ二人は出向いた。
派出所の前には退官間近の宮前巡査長が暇そうに立っていた。
「巡査長!」
朝倉が声を掛けると、宮前巡査長は暇そうな顔から一転して破顔で朝倉に手を振った。
「巡査長、退官まであと残りわずかですね」
「ああ、思えば"お巡りさん"一筋で我ながらよく辛抱して勤めあげたと思っているよ」
「あ、紹介します。彼女は日菜子と言って、僕の妻となる女性です」
妻となる女性…日菜子の表情が曇る。
朝倉の、さも当たり前というように紹介されて日菜子の顔が曇る。
これでいいの?私、大事な言葉を彼からもらっていない…
昨夜、朝倉に抱かれながら、私の考えていることがわかる?と彼になぞかけをしてみたが、結局、当てることが出来ずに有耶無耶にされた。
女が一番待ち望んでいる言葉…
それがなければ私は妻になれない…
言葉を発することが出来ずに日菜子はうつむいてしまう。
そんな場の空気を打ち消すかのように宮前巡査長の底抜けに明るい声で場をなごます。
「せっかく挨拶に来てくれたのに、愛川巡査は警ら中で席を外しているんだ」
「いえ…彼女とはこれからも顔を合わせるし、日菜子のことは追々紹介します
今日は巡査長に日菜子を紹介したくてここに立ち寄っただけですから」
そう言って朝倉はピシッと敬礼して先を急ぐことにした。
「そうかい?わざわざすまなかったねえ」
立ち去る朝倉と日菜子の背中を見やりながら「べっぴんだけど、少し暗い娘だったなあ…」と朝倉にはもっと快活な女がいいと思っていただけに二人のこれからを心配した。

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