この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
シアター"名画座"で逢いましょう
第16章 "名画座"の崩落
「あんた、ここの常連さんだったろ?
俺も週一で通ってたから何度かロビーで見かけた事があんだよ」
ほら、シャツだけの姿を見て思い出さないかい?
現場監督の男は作業服を脱いでTシャツ姿を朝倉に見せた。
「ああ!そう言えば何度かお目にかかりましたね」
熊のようにガタイがよくて髭面の風貌に記憶があったので、朝倉も彼の事を思い出した。
「あんた、なんで工事の邪魔をする」
現場監督は朝倉と顔見知りと言うことで、何がなんでも現場から追い出そうとはせず、良ければ訳を聞かせてくれないかと態度を柔和させた。
その理由というのが日菜子には聞かれたくないらしく、朝倉は現場監督の耳元に口を寄せて小声で何かを喋った。
「よぉ~し、同じこのシアターの常連だったよしみで、あんたに5分間だけ時間をくれてやるよ」
そう言うなり現場監督の男は拡声器を手にして黙々と作業を続けている労働者に向かって「いいか、よく聞け!5分間だけ小休止だぁ!みんな作業の手を止めて静かにしてやってくれ!!」と号令を掛けた。
「すまない」
「いいってことよ、さあ、とっとと済ませてくれよな」
朝倉は現場監督の男に深々と頭を下げると、何が何やらわからずにポカンと立ち尽くす日菜子の正面の前に立った。
「なに?どうしたの?」
困惑する日菜子の前で、朝倉はスッとひざまずいた。
そしてスーツの内ポケットから小さな小箱を取り出した。
「日菜子さん…お願いします。僕と結婚してください!」
そう言って朝倉は小箱の蓋を静かに開けた。
その中には小さなダイヤが付いているリングが隠されていた。

作品検索
しおりをはさむ
姉妹サイトリンク 開く


