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シアター"名画座"で逢いましょう
第8章 清掃係の三智子
シアター"名画座"の閉館時間が迫っていた。
清掃員の渋谷三智子はワゴンに清掃用具を乗せて憂鬱になっていた。
いつもは閑散としているシアターなのに、今日はなぜかいつもより観客が多く入っていた。
通常の映画館なら、飲み残して持ち帰らなかったドリンクカップやら座席下に散乱しているポップコーンの屑を片付けるのだが、ここの劇場は成人映画専門ということで、やたらとティッシュペーパーのゴミが多い。
鼻水を処理したり、口元を拭いたペーパーではない。
ツンと栗の花の残り香のする男性が放出する例の液体がたっぷりと染み込んだペーパーだから、ゴム手袋を二枚重ねにしてしっかりガードしなければ、中にはとんでもない病気持ちの男が放出しているかもしれないので感染させられるのだけは御免だった。
ペーパーだけではない、使用済みのコンドームだってある。
映画を見て興奮したカップルが場所と時を選ばずに事に及んでしまうのだろう。
何も狭い座席でナニをしなくてもいいのにと、いつも思ってしまう。
とりわけ、ここは男性が男性を愛するという「発展場」としてSNSを通じて有名になってしまったものだから、男同士でヤってしまった名残りなのか、いわゆるウ○チ付きのコンドームがあるから消臭スプレーを巻き散らかさないといけなくなる。
閉館後の座席清掃の前に、手っ取り早くトイレの清掃だけを済まそうと、清掃道具を積んだワゴンを押してトイレに向かった。

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