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愛と犠牲の果て~人妻を堕とす愛人契約~
第37章 人妻開脚商談
『その謙虚な沈黙もまた、君の美しさを際立たせている。……ところで、鴫原くん。あの日、君がグラスを持つ左手の薬指に、光るものが見えたのだが……。君は、結婚しているのかね?』
心臓が大きく跳ねた。神楽坂の問いは、逃げ場を塞ぐように静かに、だが執拗に澪の内側に踏み込んでくる。
「……はい。夫がおります」
『そうか……人妻だったか。では、お子さんは?』
「……おかげさまで。四歳になる娘がおります」
受話器の向こうで、神楽坂が低く、何とも言えない艶を含んだ笑い声を漏らした。
『母親か。だがそれ以上に……やはり「人妻」であるという事実が、私の征服欲をそそる。家庭を持ち、夫という存在がありながら、あんなにも艶やかで、洗練されたお酌を他の男にしてみせるとは……。貞淑な妻としての顔の裏に、それほどまでの魔性を秘めていたとはな。……実に、素晴らしい』
神楽坂の言葉の一つひとつが、澪の肌を直接なぞるような不快感と、同時に抗えない支配の力を伴って響いた。
『明日の商談……。仕事の話はもちろん重要だが、それ以上に君に会えるのを愉しみにしているよ。……また、あの夜のような君の「魅力」を存分に見せてくれるのだね?』
「……っ。……はい。精一杯、努めさせていただきます」
『期待しているよ、鴫原くん。では、明日』
ツー、ツー、と無機質な音が受話器から漏れる。澪はそれを置くこともできず、しばらくの間、蒼白な顔で立ち尽くしていた。
母親であり、愛する夫を持つ「人妻」である自分。それらすべてを知った上で、神楽坂はその禁断の果実を味わうかのように、オンナとしての自分を求めている。週末に夫の雄一と分かち合った、あの清らかな愛の記憶さえも、この巨大な権力者にとっては、澪をより背徳的に彩るスパイスに過ぎないのだ。
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