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愛と犠牲の果て~人妻を堕とす愛人契約~
第95章 女体の摂理がもたらす刹那の静けさ
このとき、澪の脳裏を支配していたのは、言葉にできないほどの絶望だった。そしてそれは、隣で見つめるしかない雄一にとっても全く同じだった。二人にとって「キス」という行為には、他の何物にも代えがたい、特別な、あるいはあまりにも神聖な思いが込められていたからだ。
これまでの過酷な日々の中で、愛人契約という不条理に縛られ、ポイントゲームによって肉体を脅かされ、数々の屈辱に塗れても、二人は唇の貞操だけは死守してきた。どんなに身体が汚されようとも、唇だけは雄一のものであり、澪のものであるという、夫婦の最後の聖域。キスとは、互いの魂を確かめ合い、深く愛し合っている者同士だけが交わすことを許された、神聖で侵すべからざる儀式だった。
だからこそ、この週末の夜に交わした、あの静かで優しい夫婦のキスの余韻が、今も澪の唇には確かに残っている。それを、愛情など微塵もない、ただの支配欲と独占欲の塊である鬼頭という男に穢されることは、二人の心の拠り所を、夫婦としての最後の尊厳を完全に破壊されることを意味していた。
(お願い……それだけは駄目……っ。他のことなら何でもする、どんなに肉体を蹂躙されても耐えるから、この唇だけは、雄一さんとの聖域だけは守らせて……っ!)
澪は心の中で、血を吐くような悲痛な懇願を繰り返していた。雄一もまた、ソファーの革を爪が突き破らんばかりに握り締めながら、狂いそうなほどの苦悶に苛まれていた。妻の唇が別の男に奪われる。その光景を想像するだけで、胸が引き裂かれ、五臓六腑が煮えくり返るような衝撃が走る。「他のことなら何でも受け入れるから、どうかキスだけは許してくれ」と、鬼頭の足元に跪いてでも乞い願いたい衝動が、雄一の全身を駆け巡っていた。
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