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愛と犠牲の果て~人妻を堕とす愛人契約~
第95章 女体の摂理がもたらす刹那の静けさ
しかし、鬼頭はそんな二人の聖域への祈りを愉しむかのように、掴んだ顎を微動だにさせず、その薄い唇の端を歪めて冷酷な笑みを浮かべた。その眼差しは、獲物の最も大切な宝物をじわじわと踏みにじるような、粘着質で計算高い残虐性に満ちていた。
「どうした、澪。心の準備が……などと言って、まだ逃げるつもりか? 君がどうあがこうと、今週末に真壁とキスをする前に、俺が君の唇を奪う。それは既に決定事項だ」
鬼頭は、いきなり唇を奪うようなことはせず、二人の拒絶の意思をじっくりと味わうように、ねっとりとした口調で言葉を続けた。
「そこでだ、君に選択肢を与えてやろう。どうせ俺とキスをするのなら、それを今ここで、雄一がしっかりと見ている前でするか。それとも、雄一をこの部屋から追い出し、絶対に見られないようにして、俺が君の唇をねっとりと貪り尽くすか。……どちらがいい? この二択だ。選ぶんだ。」
そのあまりにも残酷で悪趣味な二択に、澪は息を呑んだ。夫の前で辱められるのも、夫のいないところで引き裂かれるのも、どちらを選んでも地獄でしかなかった。鬼頭は夫婦の絆を徹底的に弄び、どちらを選んでも二人の心に消えない傷を刻もうとしていた。
雄一の顔から血の気が引いていく。鬼頭はあえて雄一の存在を引き合いに出し、澪に絶望的な選択を迫っているのだ。
澪は激しく涙を流しながら、捉えられた顎の痛みに耐え、それでも必死に声を絞り出した。
「……やはり、今日は……今日だけは嫌です……っ! お願いします、鬼頭さん……今日だけは、どうしても……っ」
首を小刻みに振りながら、澪はどうしてもキスを受け入れることを拒否した。週末に確かめ合った雄一との愛の記憶が、今この瞬間に上書きされてしまう恐怖に、どうしても打ち勝つことができなかったのだ。今日だけは嫌だ、というその一言は、澪が最後に振り絞った命がけの抵抗だった。
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