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キモおじ ~もう一つのエロ本を拾っただけなのに~
第4章 《堕落への序曲》
──【3ヶ月前】

あの日、聡は絶望のどん底にいた。
優香に自分の姿を見られ、マンションを特定された。彼女は怯えた顔で逃げ帰り、翌日から一切の連絡が途絶えてしまったのだ。
2年半かけて慎重に張り巡らせた糸が、たった一度の油断でぷつりと切れてしまった。

頭を抱え、薄暗い部屋で一人、モニターの録画映像を見直していた時のことだ。

(ん……?)

早送りしていた映像の中に、ふと見慣れない人影が映り込んだ。
時間を戻し、通常の速度で再生する。
そこに映っていたのは、夕暮れの公園を歩く一人の女性だった。年齢は40前後だろうか。落ち着いた服装だが、歩くたびに揺れる豊かな胸や、女性らしい丸みを帯びた腰つきが、妙な色気を放っていた。
気になった聡が過去の録画データを遡ると、その女性は別の日の夕方にも、同じように公園を通り過ぎていた。

聡は次の日から、その女性の徹底的な身辺調査を開始した。
後をつけ、閑静な住宅街の一軒家に入るのを確認する。表札には『桂木』という文字。翌朝その家を張り込んでいると、玄関から星嶺女子の制服を着た優香が出てきた。

(そうか、彼女の苗字は桂木……そしてあの女性は、優香ちゃんの母親だったのか)

聡はさらに数週間にわたり、香代子の周辺を調べ上げた。
そこで聡は、一つの重要な事実に気がついた。香代子と夫――優香の父親との関係が、完全に冷え切っていることだ。
夫が帰宅しても玄関での出迎えはなく、休日にたまたま二人で出かける姿を目撃した際も、一切の会話がなく、数メートルも距離を空けて歩いていた。香代子の表情は常に曇り、女としての潤いや輝きが失われているように見えた。

(なるほど……あの母親は、もしかすると……)

聡の口角が、三日月のように吊り上がった。
完璧な計画が組み上がった。優香に直接近づけないのなら、外堀から完全に埋めてしまえばいい。
聡は優香の証拠品――エロ本を持ち去る写真、そして「聡さんの液を飲みました」という数々の狂気じみた手紙のコピーを取り、一通の封筒にまとめた。

『娘さんの深刻な秘密について。ご主人には内緒で、905号室までいらしてください』

そんな手紙を添えて、夫が不在の時間を狙い、桂木家のポストに投函したのだ。
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