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影を背負った愛~足りない愛を、君に
第13章 二人のファースト・デイト~求めていた温もりと約束~③
<彩香SIDE>

タクシーの後部座席に乗り込んだ彩香は、
ドアが閉まる音とともに、ふっと肩の力を抜いた。


「……じゃあな。気を付けるんだぞ」


健治さんが窓の外から優しく手を振ってくれる。
彩香は慌てて窓を開け、小さく手を振り返した。

タクシーがゆっくりと動き出すと、
健治さんの大きなシルエットが夜の街灯の中に遠ざかっていく。

彩香はシートに深く体を沈め、静かに窓の外を見つめた。
車内は静かだった。

運転手さんの音楽も小さく、街の灯りだけが柔らかく流れていく。

彩香は膝の上で自分の手をぎゅっと握りしめ、
さっきまで健治さんに抱かれていた温もりを思い出すように、
胸の前で両腕をそっと抱きしめた。

(……健治さんの匂いが、まだ少し残ってる)

シャツの襟元に顔を埋めるような仕草をして、深く息を吸う。
口ひげの感触、広い胸の厚み、耳元で囁かれた低い声

——今日一日のすべてが、胸の奥でゆっくりと回想される。

美術館で手を繋いだこと。

映画館で肩を抱かれたときのドキドキ。

山下公園で自分からキスをした勇気。

中華街を後ろから強く抱きしめられながら歩いた幸せ。

そして夜、自身が数日間隠していた秘密を涙ながらに明かし、
優しく健治さんが受け入れてくれたこと

奉仕して初めて自身の奉仕で健治さんの絶頂を迎えさせたこと

健治さんの胸で将来の話をしたこと

そして父の日に自身のマンションに初めて来てほしいという
甘えたリクエストを受け入れてくれたこと……

彩香の瞳が再びじんわりと熱くなった。
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