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影を背負った愛~足りない愛を、君に
第16章 会社で疼く恋~平日の秘密の距離/火曜日~
<彩香SIDE>

火曜日 午前11時40分 企画部フロア

彩香は朝からずっと、健治さんの存在を意識しすぎていた。

昨日の給湯室での出来事の甘い余韻が強すぎて、逆にまともに顔を見られなくなっていた。

好き避け
——自分でも自覚しているのに、どうしても止められない。

健治さんが自分のデスクの近くを通るだけで体が固まり、
視線を落として小さく肩をすくめてしまう。

午前中のミーティングでは、健治さんの声が聞こえただけで頰が熱くなり、
資料に顔を埋めて「はい……」「そうですね……」と小さな声しか出せなくなった。

LINEも、朝の「おはよう」の返事をスタンプだけにしてしまった。

健治さん 12:11

朝から可愛いな。今日は少し顔色が悪いぞ。無理してないか?

彩香
[ねじり鉢巻きをして張り切るくまのスタンプ]
大丈夫です……!

短文とスタンプばかり。
彩香は自分の不器用さに自己嫌悪になりながらも、胸が苦しくて仕方なかった。

(……健治さんのこと、考えすぎて……
会社で顔見たら、昨日の給湯室のこと思い出してしまって……だめ、だめだよ私……)

13時38分 13階 印刷機ブース
コピー用紙が切れたため、彩香は印刷機ブースに入っていた。
少し薄暗い個室のようなスペースで、

背の高い棚からA4用紙の重い箱を取り出そうと背伸びをしている。

オフホワイトのブラウスに膝丈のタイトスカート。

メガネをかけたまま、むっちりとした太ももを少し開いて踏ん張る姿は、
健気で無防備だった。

「……んっ……重い……」

ようやく箱を引きずり出して床に下ろした瞬間——
ブースの入り口に気配がした。

「…………っ」

彩香の背中がびくりと凍りついた。


ゆっくり振り向かなくても、わかった。

あの低く落ち着いた気配、広い肩幅のシルエット、微かに漂う香り。

大内健治だった。
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