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影を背負った愛~足りない愛を、君に
第16章 会社で疼く恋~平日の秘密の距離/火曜日~
その後、噂はあっという間に広がっていた。

「ねえ、中山さんって大内課長と……なんか怪しくない?」

「給湯室で二人きりになってたって聞いたよ」

「目が合ったらすぐ逸らすし、課長も中山さんのほうばっかり見てる気がする……」

「まさか、社内恋愛? 課長47歳で中山さん27歳だよ? バレたら大問題じゃん」


高浜さん、森川さん、小田さん、碇くん……
普段仲の良いメンバーまでが、廊下や給湯室でひそひそと囁き合う。


田中部長の厳しい視線。大迫課長の呆れた顔。


人事部に呼び出され、二人並んで座らされる展開——

「大内課長、中山さんと交際しているという話ですが?」

「これは社内秩序に関わる問題です。どちらかが異動になる可能性も……」

彩香は夢の中で必死に否定しようとするが、声が出ない。
隣の健治さんは落ち着いた顔でいるのに、彩香の目は涙でいっぱいになり、
震える手でスカートの裾を握りしめていた。


(だめ……ばれた……
みんなに変な目で見られて……健治さんに迷惑かけて……
私たちの関係、壊れちゃう……!)


噂はどんどん膨らみ、社内全体に広がっていく。


「大内課長が若い子に手を出した」

「中山さん、ファザコンだって本当だったんだ」



そんな言葉が頭の中で渦を巻き、彩香は耐えきれずにその場にしゃがみ込んだ。



——ピピピピッ! ピピピピッ!



目覚まし時計の音が、悪夢を切り裂いた。

彩香は跳ね起きた。

額に冷たい汗が浮かび、息が荒い。
ベッドの上で膝を抱え、しばらく放心したまま天井を見つめていた。

「……怖かった……」

夢の余韻が胸に重く残る。
みんなの冷たい視線、噂の嵐、健治さんに迷惑がかかる姿
——どれも現実味を帯びて感じられた。

(……こうならないように、絶対にばれないように頑張って隠さなきゃ……
そのためには、もっと距離を置かなきゃ……頑張らないと……)

彩香はぎゅっと唇を噛み、スマホを握りしめた。
健治さんへの想いは変わらない。

むしろ昨日の給湯室の感触を思い出すだけで胸が熱くなる。


だからこそ、守らなければいけない。


「健治さん……ごめんなさい。でも、私たちのために……」

そう呟いて、彩香はゆっくりベッドから降りた。
今日から、職場では確実に距離を取ろうと心に決めた。
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