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影を背負った愛~足りない愛を、君に
第17章 【番外編】夢の中の家族と現実の涙~エピソード-1years~
2023年6月上旬 水曜日 深夜 横浜 1LDKマンション

彩香はベッドの上で、はっと目を覚ました。

「……はっ……!」

息が荒い。頰が熱く、目尻が濡れていた。
枕元に置いたスマホの画面は午前2時47分を示している。
夢の余韻がまだ胸の奥に残っていた。

健治さんの大きな胸に顔を埋めて泣いている自分。
「お母さんも一緒に住もう」
と言ってくれた低く優しい声。
額に落とされたキス。
厚みのある胸板と、逞しい腕に包まれる安心感——。

彩香は両手で顔を覆い、
暗い天井に向かって小さく呟いた。

「……夢、だったんだ……」

体を起こすと、Tシャツの胸元が涙で湿っていた。
夢の中では、健治さんと恋人になって半年後だった。
お母さんが乳がんになったことを伝えて、
結婚の話をして……

「俺が責任を持つ」と、迷わず言ってくれた。

彩香は唇を噛んだ。

(……健治さんも、あの人と同じだったらどうしよう)

彩香は長年の片思いを一旦忘れようと
マッチングアプリをしていた。

だが、どれも変なメッセージか
画像とビデオ通話の顔が違うか
ヤリモクばかりだった。

そんななかで、マッチングアプリで彩香の好みの顔で
「いい人かも」と思っていた、
年収800〜1000万円のバツイチ男性がいた。

ビデオ通話もして、LINE交換もして
会う約束までしていたのに。

つい一昨日——月曜日の夜に届いたメッセージ。


彩香が真剣に伝えた条件に対して、
返ってきた言葉は冷たかった。

「同居は無理。
だいたい誰が金を払うんだよ。誰が世話するんだよ。」

「親戚付き合いもあるし、
そんな結婚なんて甘い話じゃない」

「セックスは自然にしたい時にするものでしょ。
3ヶ月待つとか、なんか変だよ」

「恋愛したらわかるって」

そして最後に——

「お幸せに」

彩香は昨日、帰宅後すぐに泣き崩れた。
散々泣いて、鼻も腫らして、
今日も一日中ぼーっとしながら仕事をしていた。

「……私、わがままなんだろうな」

彩香は膝を抱えてベッドの上で小さくなった。
メガネを外した幼い顔が、
街灯の光に照らされて寂しげに歪む。
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