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影を背負った愛~足りない愛を、君に
第18章 会社で疼く恋~平日の秘密の距離/水曜日~
水曜日 朝 企画部フロア

彩香は今朝、気合を入れて出社した。

(今日はちゃんと普通に接しよう……!
 好き避けなんて、もうやめよう。
 健治さんにも迷惑かけたくないし……昨夜、約束したんだから!)

昨夜のLINEで「普通に接する」と健治さんに約束した自分を励ましながら、フロアに入る。

薄いブルーのブラウスに膝丈のベージュスカートという、
比較的いつもの地味めスタイルで、髪もきっちりまとめていた。

しかし——。健治さんの姿が視界に入った瞬間、彩香の足が止まった。
(……あ……)濃紺のシャツを着た逞しい背中と、

深く刻まれた皺のある横顔。
昨日の夜に

「お前は絶対に傷つかせない。」
「それに……バレたとしても、俺は後悔しない。
 彩香と付き合えてることを、堂々と胸を張れる。」
「夢の中で逃げても捕まえるからな」

と返されたメッセージが健治さんの低い声で脳裏で構築され再生される。

「…………っ」

彩香は慌てて視線を逸らし、早足で自分の席に向かった。
結局、朝の挨拶も「いつも通り」にはできず、

小さく会釈しただけで自分のデスクに着席した。


午前中 11:20頃

健治がチームの進捗確認で彩香のデスク近くに来た。

「中山、昨日の資料の件だが——」

健治さんが低く落ち着いた声で話しかけてきた瞬間、彩香の肩がびくりと跳ねた。

「は、はい! あの……少し待ってください!」

彩香は資料を胸に抱えると、ほとんど反射的に立ち上がった。

「高浜さんにちょっと確認したいことが……すぐ戻ります!」

そう言い残して、健治さんの顔を直視できずに早足で逃げてしまった。

健治さんはその後ろ姿を静かに見送り、口ひげの下で小さく笑みを浮かべた。

(……また逃げたな。昨日約束言ってたのに、可愛いな)

健治さんは腕を組んで、彩香が逃げていった方向をしばらく眺めていた。

周囲の社員には気づかれない程度に、目元が優しく細められている。
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