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影を背負った愛~足りない愛を、君に
第20章 会社で疼く恋~平日の秘密の距離/金曜日~
-コンコン

ドアがノックされた。

「大内! もう入ってるか?」

田中部長の声。
その後ろから、軽い調子の声が続く。

「よお大内、早いな〜。俺も混ぜろよ、会議前に軽く打ち合わせってことで」

矢賀部浩一(43歳・営業部課長)だった。


彩香の顔が一瞬で真っ青になった。

「っ……!」

慌てて健治の胸から離れ、資料を抱えるふりをして出口に向かう。

健治は素早く彩香の背中を軽く押し、彼女を庇うようにその後ろに立った。
彩香はドアを開けると、健治と目も合わせず小声で呟いた。

「……失礼します、大内課長……」

そして、田中部長と矢賀部の間をすり抜けるようにして廊下へ飛び出した。
耳まで真っ赤で、足早に自分の席へ戻っていく。


田中部長は怪訝な顔をしたが、特に何も言わず部屋に入った。
矢賀部は細身の体を揺らしながら、ニヤニヤと健治を見て言った。


「おいおい、今出てったの企画部の小さい子だろ?
 彩香ちゃんじゃなかったか? 顔真っ赤にしてたぞ。
 大内、お前また部下をいじめたな? 相変わらず怖い上司キャラ全開かよ(笑)」


健治はいつもの渋い表情を崩さず、肩をすくめた。


「ただの報告だ。お前こそ、余計な詮索するなよ、矢賀部」


矢賀部は笑いながら椅子に座り、軽口を叩き続ける。

「ははっ、相変わらず固いな〜。
 俺はただ、仲良し同期として心配してるだけだって。
 スカッシュの後でビール奢れよ、相談乗ってやるからさ」

健治は内心で小さく舌打ちした。

(……危なかったな)


しかし口元には、彩香の慌てふためいた後ろ姿を思い出して、
わずかに満足げな笑みが浮かんでいた。


(日曜日……お前をたっぷり抱きしめてやる)




<彩香SIDE(13階 自席に戻って)>

彩香は自分のデスクに座ると、両手で顔を覆った。
「……やだ……また顔見られて……声も震えてた……
 健治さん、意地悪なのに……優しくて……」

胸が熱い。

昼休みの残り時間、彼女は健治さんの胸の感触を思い出して、
また小さく身をよじらせながら悶えていた。
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