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影を背負った愛~足りない愛を、君に 《2024年夏至編》
第44章 逃げ切れない平日の甘い攻防~水曜~昼編
<健治 SIDE>

同日 同時刻 神奈川支店 13階 企画部フロア

一方健治はデスクに座ったまま、背もたれに体を預けていた。
午前中の彩香の「好き避け全開」っぷりを横目で観察し続け、
口ひげの端を指で軽く撫でながら、内心で低く笑っていた。

(……また逃げてるな。
ロッカールームにまで逃げ込んで、浅川と一緒にこそこそ戻ってくるなんて
……可愛すぎる)

彩香が森川さんに明るく話しかけ、
「今日は天気がいいですねー。外で食べたい気分ですねー」
と声を弾ませてフロアを出て行く姿を、健治は視界の端で捉えていた。

(マックか……)

健治の胸に、ふっと温かい想像が広がった。
彩香がトレーを持って窓際の席に座り、ハンバーガーを小さくかじっている姿。
少し頰を膨らませてポテトを食べ、シェイクをストローでちゅるちゅる吸う様子。

時折スマホを見ては耳まで赤くなり、
「健治さん……」と小さく呟いているかもしれない。

(……いいな)

口元が自然と緩む。
47歳の男が、
部下の27歳の恋人がファストフードを食べているだけでこんなに胸が熱くなるとは、
自分でも少し意外だった。

(あの地味で真面目な彩香が、マックで一人でセットを食べてる……
しかも今、俺のことを考えて頰を赤らめているかもしれない……)

独占欲と、愛おしさが同時に込み上げてくる。
健治はゆっくりと立ち上がった。

「少し外の空気でも吸ってきます。」

大迫課長に軽く声をかけ、健治はフロアを後にした。
足は自然と、会社近くのマクドナルドの方へ向かっていた。

(捕まえに行くか……
いや、今日はあえて遠くから見てるだけにしようか。
逃げてる彩香を、こっそり眺めるのも悪くない。でもどうしようか)

横浜の昼下がりの陽光の下、
健治の逞しい体躯がゆったりとした足取りで歩いていく。
口ひげの下に浮かぶのは、満足げで少し意地悪な笑みだった。

(彩香……お前がどれだけ避けても、俺はいつもお前を見てるぞ)
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