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影を背負った愛~足りない愛を、君に 《2024年夏至編》
第45章 逃げ切れない平日の甘い攻防~水曜~残業編
同日 17時35分 神奈川支店 13階 面談室

残業作業が始まった面談室は、至って真面目な雰囲気だった。
テーブルの上にはPCと資料が広げられ、照明は明るく、3人はそれぞれの席に着いていた。

健治さんはいつもの落ち着いた課長の表情で資料を進め、
小川さんは真剣にセキュリティの観点から意見を述べ、
彩香は必死にメモを取りながら参加していた。

表面的には、ただの仕事の残業ミーティングにしか見えなかった。



同日 17時55分 神奈川支店 13階 面談室 

小川さんが時計を確認し、席を立った。
「すみません、私ここまでです。次の会議が入ってるので……」

健治さんは穏やかな笑みを浮かべ、丁寧に頭を下げた。

「小川、今日はありがとう。
セキュリティの部分、的確に指摘してくれて助かったよ。
お疲れ様。しっかり休んでくれ」

小川さんは「失礼します」と言い、部屋を出て行った。

ドアが閉まる音が響いた瞬間——

健治さんはまだ微笑んだまま、静かに彩香の方へ視線を移した。
低く、しかしはっきりとした声で続けた。

「……中山も、本当によく頑張ったな。特に午前中からずっと集中してくれて……
疲れているだろうに、逃げずにちゃんと残ってくれた」

彩香にとっては、明らかに意地悪な言葉だった。

(……逃げずに……って……!
午前中からずっと逃げ回ってたの、全部知ってるくせに……!)

彩香の顔が一瞬で真っ赤になり、膝の上で指をぎゅっと握りしめた。
耳まで熱くなり、背中に冷や汗が流れる。

健治さんは表情を崩さず、真面目な課長の声のまま続けた。

「これからは2人だけで進めていくが……しっかり深く、丁寧にやっていこう。
中山、頼むぞ」

最後の「深く、丁寧に」という部分に、
彩香は今までの甘やかしや夜の記憶を重ねてしまい、小さく体を震わせた。

(……意地悪……本当に意地悪……小川さんがいたのに、もう完全に2人きり……
どうしよう……もう逃げられない……)

面談室に残されたのは、静かな空気と、
健治さんの熱を帯びた眼差し、そして彩香の激しい動揺だけだった。
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