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影を背負った愛~足りない愛を、君に
第10章 言えない夜の吐息 ~土曜日までの不安~
<健治SIDE>

木曜日 ―

昨日水曜日の朝のエレベーター事件以降、彩香はさらに
「普通の中山彩香」を演じることに全力を注いでいた。

木曜日の朝8時40分、大内健治は、
彩香は出社してきて自席についた様子を自然と目で追っていた。

(……彩香、今日はまた早めに出社したな。
顔色も少し悪い……何か隠しているような……)

健治さんは彩香がトイレから戻ってきた時、わずかに眉を寄せた。
歩き方がいつもよりぎこちなく、下腹部を気にするような仕草が見えたからだ。

(体調が悪いのか……?風邪か、疲れか……
それとも、俺とのことが負担になっているのか……)

心配が胸に広がるが、健治さんはそれを口に出せなかった。
社内では上司と部下。プライベートなことを聞くのは危険すぎる。

午前中、健治さんは必要最低限の指示だけを出し、
彩香に近づきすぎないよう意識していた。

しかし、彩香が資料を抱えて他フロアへ移動する後ろ姿を見るたび、心がざわついた。

(……無理をしているのが丸わかりだ。
俺のせいで彩香を苦しめているのかな……
でも、今ここで「体調はどうだ?」と聞くのも、彩香を追い詰めるだけかもしれない……)

健治さんの胸には、
彩香を心配する気持ちと、
彼女をこれ以上傷つけたくないという想いが重くのしかかっていた。
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