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影を背負った愛~足りない愛を、君に
第11章 二人のファースト・デイト~求めていた温もりと約束~①

深呼吸を繰り返しながら、改札の方へ視線を向ける。

すると——少し離れたところから、がっしりとした体躯の男が歩いてくるのが見えた。

深く刻まれた皺、鋭い眼差しに口ひげ。
仕事では見せない、少しリラックスした表情の健治さん。

白のポロシャツにチノパンという、カジュアルながらも男らしい装い。
健治は彩香を見つけるなり、口元を緩めた。

「彩香。待たせたか?」
低く渋い声。
彩香はイヤホンを慌ててポケットに押し込み、首を振った。

「……い、いえ! 全然……!
 私こそ、早く来すぎちゃって……」

声が上ずっている。
健治はそんな彩香の赤い顔をじっと見て、意地悪く小さく笑った。

「どうした? 顔、赤いぞ。
 ……何か、聞いてたのか?」

彩香はびくっと肩を震わせ、必死に首を横に振った。

「な、なんでもないです! 本当に!」

(聞かれてないよね……? 絶対に聞かれてないよね……!?)

彩香は恥ずかしい気分を変えようと話題を変えた。

「それにしても……健治さん、私服もすごく素敵です……」

彩香は顔を赤らめながら小声で話した。

「そうか? 彩香の方が可愛いよ」

健治さんは優しく微笑むと、自然に右手を差し出した。

「手、繋ごうか」彩香は恋愛未経験なうえに父親も幼少期からいなかったため、
異性と手をつなぐことなど一度もなかった。

耳まで真っ赤になりながらも、恐る恐るその大きな手に自分の小さな手を重ねた。

(……大きい……温かい……)

155cmの彩香と175cmの健治さん。

身長差20cmが、彩香に安心感と甘い幸福感を同時に与えていた。

最初はぎこちなく、指先が震えていた彩香だったが、
健治さんが優しく指を絡めてくれると、幸せのあまり自然と笑顔がこぼれた。

「恥ずかしい……でも、嬉しいです……」

彩香は健治の広い背中に並んで歩き始めた。

胸の鼓動は、まだ岡田有希子の曲のように、止まらなかった。

初デートの、始まりだった。
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