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微笑みの悪女
第2章 チェ・ソウン 出会い
「し、失礼しまた、お、お兄様に何卒よろしく」
なんともいやらしい態度で部屋を出て行く工場長。
省かれた女工達も怯えながら出て行く。
そんな様子を見送るミジョン。
部屋の中はミジョンと残った女工の二人となった。
「名前は?」
一人残った女工に無表情で尋ねるミジョン。
「はっ!チェ・ソウンです」
背筋を伸ばし、前を見据えたまま応える女工。
どんな教育よりもキム一族への敬意を優先して教える、この国の教育。
そんな教育は民間にもしっかり根付いていた。
「少し待機だ、チェ・ソウン」
「はっ!」
チェ・ソウンをその場に残し。
隣の部屋に消えるミジョンだった。

「チェ・ソウンの家族には家族全員食料十年分を支給しろ」
スマホ片手に何処かに指示を出しているミジョン。
「他の女工には本人と家族全員に食料一年分の支給だ」
ニコリともしないミジョンだが。
貧しいこの国において、女工本人やその家族には破格の対応と言ってよかった。
だが電話はまだ終わっていない。
電話の向こうから何を聴かれたようなミジョン。
「ああ、ヤツは処分しろ」
冷静さに冷静さを上塗りした表情で静かに応えるミジョンだった。

電話を終えたミジョン。
持ち込まれていたスーツケースの中から。
多分、ミジョンの物と思われる黒いスラックスを取り出す。
そして。
チェ・ソウンの元に戻る。
直立不動のチェ・ソウンの前に立つと。
「これを履け」
手にしたスラックスを無造作に突き出す。
無論、無表情のまま。
そんなミジョンに。
「はっ!ありがとうございます!しかしもったいないお言葉、このままで充分です」
やはり無表情で応えるチェ・ソウン。
しかもこの国の国民としてはキム一族に対する返答として百点満点。
「いいから履け」
口許に微かな笑みを浮かべるミジョン。
無表情合戦に先に終止符を打つ。
そんなミジョンに。
「はっ!ありがとうございます!」
やはり口許に微かな笑みを浮かべスラックスを受け取るチェ・ソウンだった。

無表情合戦は引き分けた。
そんな感じであった。
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