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壊滅の刻
第9章 和弥
和弥の真っ黒になったマスクを取って、冷たい井戸水で絞ったタオルで和弥の顔を拭いた。顔を覆った火山灰の粉塵が拭いたタオルに付着してすぐに真っ黒になった。でも、拭いたところは綺麗になった。麻美は一心不乱に和弥の顔を拭いた。面積はそれほど大きくもない。すぐに拭き終えた。途中で、和弥は目覚めたが、麻美が拭き終わるまで待った。拭き終えると、
「ありがとう」
と、微かな声で言った。火山灰を吸って喉を痛めたのか、声がかすれていた。
「大丈夫?」
麻美がやっと開いた和弥の目を見つめて聞いた。
「大丈夫だよ」
声はかすれていても、ハッキリとした口調で言った和弥。
「無理しなくてもいいのに」
麻美が和弥を見つめながら言った。
「だって、会いたいって言ったじゃん」
和弥が微笑んだ。
「そ、そうだけど」
確かに、そう伝えたけど。まさか、この降灰が続く中、やってくるとは思わなかった。そもそも住所も知らないはずだったから。
最初、四谷大塚で出会ったとき、和弥は麻美より小さかった。笑顔の可愛い幼さの残る和弥。そう、小学三年生の春。あれから中学受験を目指して、同じコースで頑張ってきた。
ある意味、戦友。
もしかすると、この災害の中で、また、共に戦うことになるのかもしれないという予感が麻美にはあった。
富士山の噴火は八日が経っても収束の見通しは立っていなかった。祖父のラジオから聞こえてくるのは、未だに収まる気配のない富士山の状況だった。
宝永の大噴火では十六日間、噴火は続いたと麻美は何かの本で読んで記憶があった。とすると、まだ、折り返し。
不気味な地響き。そして、噴火の音なのか、まるで家の真上で花火が破裂するような音が響き、家が揺れる。
酒匂川の上流には火山灰が大量に堆積し、それが降雨で流されて、下流で洪水を引き起こしたというニュースが、祖父のラジオから流れ、麻美と和弥のいる部屋にも聞こえていた。
こんなことになるのなら、宝永の大噴火を取り上げていた、いつか読んだ本をもっと読みこんでおくべきだったと麻美は後悔した。
そして、富士山の噴火の影響が神奈川県に広がるとしたら、渋谷にいた方が安全だったのかもしれないと思った。と同時に、和弥に会いたいと言って呼び寄せてしまった自分の責任を感じていた。
「ありがとう」
と、微かな声で言った。火山灰を吸って喉を痛めたのか、声がかすれていた。
「大丈夫?」
麻美がやっと開いた和弥の目を見つめて聞いた。
「大丈夫だよ」
声はかすれていても、ハッキリとした口調で言った和弥。
「無理しなくてもいいのに」
麻美が和弥を見つめながら言った。
「だって、会いたいって言ったじゃん」
和弥が微笑んだ。
「そ、そうだけど」
確かに、そう伝えたけど。まさか、この降灰が続く中、やってくるとは思わなかった。そもそも住所も知らないはずだったから。
最初、四谷大塚で出会ったとき、和弥は麻美より小さかった。笑顔の可愛い幼さの残る和弥。そう、小学三年生の春。あれから中学受験を目指して、同じコースで頑張ってきた。
ある意味、戦友。
もしかすると、この災害の中で、また、共に戦うことになるのかもしれないという予感が麻美にはあった。
富士山の噴火は八日が経っても収束の見通しは立っていなかった。祖父のラジオから聞こえてくるのは、未だに収まる気配のない富士山の状況だった。
宝永の大噴火では十六日間、噴火は続いたと麻美は何かの本で読んで記憶があった。とすると、まだ、折り返し。
不気味な地響き。そして、噴火の音なのか、まるで家の真上で花火が破裂するような音が響き、家が揺れる。
酒匂川の上流には火山灰が大量に堆積し、それが降雨で流されて、下流で洪水を引き起こしたというニュースが、祖父のラジオから流れ、麻美と和弥のいる部屋にも聞こえていた。
こんなことになるのなら、宝永の大噴火を取り上げていた、いつか読んだ本をもっと読みこんでおくべきだったと麻美は後悔した。
そして、富士山の噴火の影響が神奈川県に広がるとしたら、渋谷にいた方が安全だったのかもしれないと思った。と同時に、和弥に会いたいと言って呼び寄せてしまった自分の責任を感じていた。

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