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壊滅の刻
第9章 和弥
玄関の三和土の上で倒れた和弥。火山灰が和弥の着ていたレインコートのあちこちから落ちて舞った。ボロボロのレインコートが、和弥のこの数日の行程の激烈さを物語っていた。コールマンの厚手のレインコートは彼方此方が破れていた。それでも、中綿が飛び出さずに済んだのは、仕立ての良さの証左だった。
祖母が井戸で汲み上げて甕に入れてある水を麻美に渡し、近くの神社の名前が記載された袋に入ったままのタオルを取り出して、
「大丈夫。寝ているだけよ。寝息が聞こえるでしょ」
と、言いながら、そのタオルを水につけると、
「顔を拭いてあげたら」
と、絞りながら渡した。祖母は単なる友達だとは思っていない様子だった。それはそう、こんな状況で渋谷から鎌倉まで歩いてくるのだから…。
祖父母とあとは、隣の若夫婦。それ以外とは遮断された世界に、突如として現れた和弥。コクられて付き合ったのは間違いないけど、厳しい校則もあって、デートらしいデートはした記憶がなかった。渋谷の駅前は生活指導の先生たちの監視の目があった。
だから、改札を出て、帰路を進み、和弥は桜岡郵便局前の交差点を右折し、麻美は東急本社の前の変則交差点を左折して、二人が生まれた頃に建ったマンションの横にある鶯谷緑地で話をするのがデートだった。
周囲には人の気配。窓が公園に向いていた。そんな視線を感じることもある遊具もない公園の円柱型の椅子に座って、公園に唯一ある施設とも言える自販機でお茶のペットボトルを買って、話すのが二人のデート。
男子校と女子校。互いに距離感がわからないし、どんなことを話したらいいのか、わからないままに、勉強の話ばかりしていた。教科の勉強がどこまで進んだかとか、体育の授業の愚痴や先生の愚痴。四谷大塚で一緒だった友達たちの音信も話題になることもあった。
手を繋いだこともない。ハグなんても当然ない。まして、キスなんて…。
でも、麻美はそんな和弥が好きだった。コクられて、受け止めて、付き合い始めたばかりのときは、和弥が積極的だったらどうしよう?と悩んだこともあった麻美。それは杞憂だった。手も繋がない関係だけど、決めた時間に、公園で落ち合って、話をする。それだけ。
でも、それで心が和んだ。
祖母が井戸で汲み上げて甕に入れてある水を麻美に渡し、近くの神社の名前が記載された袋に入ったままのタオルを取り出して、
「大丈夫。寝ているだけよ。寝息が聞こえるでしょ」
と、言いながら、そのタオルを水につけると、
「顔を拭いてあげたら」
と、絞りながら渡した。祖母は単なる友達だとは思っていない様子だった。それはそう、こんな状況で渋谷から鎌倉まで歩いてくるのだから…。
祖父母とあとは、隣の若夫婦。それ以外とは遮断された世界に、突如として現れた和弥。コクられて付き合ったのは間違いないけど、厳しい校則もあって、デートらしいデートはした記憶がなかった。渋谷の駅前は生活指導の先生たちの監視の目があった。
だから、改札を出て、帰路を進み、和弥は桜岡郵便局前の交差点を右折し、麻美は東急本社の前の変則交差点を左折して、二人が生まれた頃に建ったマンションの横にある鶯谷緑地で話をするのがデートだった。
周囲には人の気配。窓が公園に向いていた。そんな視線を感じることもある遊具もない公園の円柱型の椅子に座って、公園に唯一ある施設とも言える自販機でお茶のペットボトルを買って、話すのが二人のデート。
男子校と女子校。互いに距離感がわからないし、どんなことを話したらいいのか、わからないままに、勉強の話ばかりしていた。教科の勉強がどこまで進んだかとか、体育の授業の愚痴や先生の愚痴。四谷大塚で一緒だった友達たちの音信も話題になることもあった。
手を繋いだこともない。ハグなんても当然ない。まして、キスなんて…。
でも、麻美はそんな和弥が好きだった。コクられて、受け止めて、付き合い始めたばかりのときは、和弥が積極的だったらどうしよう?と悩んだこともあった麻美。それは杞憂だった。手も繋がない関係だけど、決めた時間に、公園で落ち合って、話をする。それだけ。
でも、それで心が和んだ。

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