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想いあふれて
第3章 濡れたシャツ、肌の熱
カサブランカの二階に住まいを移してから
一か月が過ぎた。

りつかは今、
カフェカサブランカの店長として
週に五日店を開けている。


これまでオーナーとして
一人で店を切り盛りしていた店主の花は、
数日前に夫とともにフランスに発った。


───私が不在の間、店を開けてくれさえすれば、
やり方はすべてりつかさんに任せるわ

花にそう言われ、飲み物を数種類と、
トースト、ホットドッグを出すにとどめ、
無理のない範囲で細々と運営している。


花が不在になったと同時に
常連の客足が少しばかり遠のいたが、
海の眺めを目当てに尋ねてくる一元客で
それなりに忙しいときも経験し、
オペレーションにもだいぶ慣れた。





分厚く黒い雲が、
カサブランカの建つ崖の上に覆いかぶさり、
今にも雨が降り出しそうな平日の午後。

嵐の予報も出ていたし、
店内に客もなかったので、
このまま店じまいしようと決め、
立て看板を片付け駐車エリアの入り口にチェーンを張ろうと外に出た。


すると、一台の赤いミニクーパーが、
砂利敷を踏んで車庫に入って来た。
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