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想いあふれて
第7章 終章ー風と光、開く花
休業日の夜のカサブランカの店内に、明かりが灯っている。
カレー店で夕食を終えたりつかは、信忠と紫苑と三人でテーブルを囲み、フルーツタルトを切り分けていた。
同時期に関係を持った二人の男にタルトのピースを分けながら、りつかはどうしようもない居心地の悪さを感じていた。にもかかわらず、知り合ったばかりの信忠と紫苑は、まるで昔からの友人のように雑談を楽しんでいる。
信忠が、先ほど行ったインドカレーの店のオーナーの派手なチャイの注ぎ方を再現して、紫苑の笑いを取っている。立ち上がってスパイスティーを猛烈な勢いでカップに注ぐインド人オーナーになりきる信忠と、それを見て腹を抱えて笑う紫苑の無邪気さに、ついていけない思いだ。
今から十分ほど前。
りつかが信忠に送りとどけてもらうのとほぼ同時に、紫苑が車で店にやってきたのだった。
「大叔母のところに行って来たんだけど、タルトがたくさん残っちゃって」
紫苑はにこやかにりつかに言うと、りつかの隣に立っていた信忠に感じのいい会釈をした。りつかはしどろもどろになりながら、信忠に紫苑を、紫苑に信忠を紹介した。そんなりつかの反応を見た信忠は、「別の男性とも寝た」という相手が、紫苑であることをすぐに察知してしまったようだった。
つい最近寝た二人の男の板挟み。りつかにとってこれほど恥ずかしく後ろめたいことはない。
この状況から逃げ出したい───。
そう願うりつかの思いを察したのか、紫苑が口火を切った。
「よかったらこれ、二人で、どうぞ・・・じゃあ僕はこれで」
紫苑はそう言ってりつかにやたらと大きなケーキ箱を差し出すと、店を出ようとドアに手を伸ばした。ずっしり重たい箱を受け取ったりつかは、とっさに紫苑を呼び止めてしまった。
「待って、紫苑、こんなに食べられないよ」
りつかのその反応を見て、信忠も紫苑を呼び止めた。
「待って紫苑くん。ここは紫苑くんも一緒に、シェア、しないか」
そう言って信忠が、やけに真剣なまなざしを紫苑に向けた。紫苑の目元が嬉しそうに緩んで、信忠に笑みを返す。
それから二人は、「さあ、どうする?」と問うように、りつかを見て小さく首を傾げた。
「そうね・・・わかった。じゃあ、三人で食べよう」
りつかは仕方なく、二人を店に迎え入れることにしたのだった。
───どうしてこんな状況に自分を追いやってしまったんだろう

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