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美香・透明な婚姻
第3章 灯篭流しの夜に濡れる
夜が更け、酒杯を重ねるごとに会話は弾んでいった。
皆が上機嫌になる中、秀隆くんはさらに四、五杯の水割りを胃へと流し込んだ。普段はあまり酒を飲まないのに、先ほどのよし兄の言葉が棘のように胸に刺さり、気づけばいつも以上のハイピッチでグラスを空けていた。
夜が更けるにつれ、彼の頭は静止することを失い、呂律も怪しくなってきた。そしてカウンターに突っ伏し、顔を横に向けてそっと目を閉じた。
「秀、大丈夫か?」というよし兄の声が聞こえたが、「大丈夫……」とだけ掠れた声で返し、彼は冷たいカウンターの感触を枕代わりに浅い眠りに落ちてしまった。
隣に座るよし兄が私を見つめ、語り始めた。
「美香さん、どうね、一人身やと寂しくないかの?」
「全然。一人の自由を楽しんでるわ。よし兄こそ。独身で一人でいて、寂しいって思うことないの?」
「いや、俺にはカメラと酒があるし、こうしてくだらない愚痴を聞いてくれる仲間がいるからな。寂しさを感じる暇はないよ」
「結婚はしないの? それとも、したくないだけ?」
「もう少しさ、自分自身で納得のいく仕事ができるようになってからかな。結婚なんて大層なことを考えるのは」
店に入ってから、もう二時間が過ぎただろうか。朦朧とする意識の霞の向こうで、私とよし兄の声はさらに距離を縮めていった。
「最近ね、職場の部長のセクハラが本当にひどいのよ。顔を合わせれば『早く再婚しろ』ってそればかり。そんな気なんてこれっぽっちもないのに、私の顔を見るたびに言うの。ひどいと思わない? これって完全にセクハラよね」
「それはアウトだな、完全にセクハラ決定や。その部長、本当は美香さんに気があるんじゃないのか?」
「私に? まさか。私より若くて可愛い子なんて職場にたくさんいるんだから、その子たちに声をかければいいのよ。あれは完全にお局いじめ。若い子の前で格好つけたいだけよ。それに、あの部長だけは絶対に遠慮するわ。まるでガマガエルみたいな男なんだもの」
「美香さん、俺でよかったら、いつでも力になりますよ。悩み事なら何でも聞くから」
「だめよ……そんなに優しくしないで。私、甘えちゃうから」
私の声が、甘ったるく鼻にかかったような響きを帯びていく。よし兄の声がだんだんと大きくなっていく。私の言葉が何かに火をつけたようだ。
皆が上機嫌になる中、秀隆くんはさらに四、五杯の水割りを胃へと流し込んだ。普段はあまり酒を飲まないのに、先ほどのよし兄の言葉が棘のように胸に刺さり、気づけばいつも以上のハイピッチでグラスを空けていた。
夜が更けるにつれ、彼の頭は静止することを失い、呂律も怪しくなってきた。そしてカウンターに突っ伏し、顔を横に向けてそっと目を閉じた。
「秀、大丈夫か?」というよし兄の声が聞こえたが、「大丈夫……」とだけ掠れた声で返し、彼は冷たいカウンターの感触を枕代わりに浅い眠りに落ちてしまった。
隣に座るよし兄が私を見つめ、語り始めた。
「美香さん、どうね、一人身やと寂しくないかの?」
「全然。一人の自由を楽しんでるわ。よし兄こそ。独身で一人でいて、寂しいって思うことないの?」
「いや、俺にはカメラと酒があるし、こうしてくだらない愚痴を聞いてくれる仲間がいるからな。寂しさを感じる暇はないよ」
「結婚はしないの? それとも、したくないだけ?」
「もう少しさ、自分自身で納得のいく仕事ができるようになってからかな。結婚なんて大層なことを考えるのは」
店に入ってから、もう二時間が過ぎただろうか。朦朧とする意識の霞の向こうで、私とよし兄の声はさらに距離を縮めていった。
「最近ね、職場の部長のセクハラが本当にひどいのよ。顔を合わせれば『早く再婚しろ』ってそればかり。そんな気なんてこれっぽっちもないのに、私の顔を見るたびに言うの。ひどいと思わない? これって完全にセクハラよね」
「それはアウトだな、完全にセクハラ決定や。その部長、本当は美香さんに気があるんじゃないのか?」
「私に? まさか。私より若くて可愛い子なんて職場にたくさんいるんだから、その子たちに声をかければいいのよ。あれは完全にお局いじめ。若い子の前で格好つけたいだけよ。それに、あの部長だけは絶対に遠慮するわ。まるでガマガエルみたいな男なんだもの」
「美香さん、俺でよかったら、いつでも力になりますよ。悩み事なら何でも聞くから」
「だめよ……そんなに優しくしないで。私、甘えちゃうから」
私の声が、甘ったるく鼻にかかったような響きを帯びていく。よし兄の声がだんだんと大きくなっていく。私の言葉が何かに火をつけたようだ。

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