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美香・透明な婚姻
第1章 帰郷
秀隆くんと妹が結婚して十年。
些細な諍いから、彼らの間では長いこと夫婦の夜の営みが途絶えているらしい。そういう私も、独り身の寂しさの中で、女としての盛りを迎えながら男の肌に飢え、満たされない欲求を抱えていた。
私たちは互いに、ぽっかりと空いた心の隙間と肉体の渇きを埋めるように惹かれ合った。一度肌を合わせれば、背徳感などどこかへ吹き飛び、ただ欲求を満たすだけの濃密な時間が私たちを支配した。私の中に眠っていた激しい情欲が呼び覚まされ、彼の逞しい腕で抱かれるたびに、私は女である喜びを実感した。
性癖や身体の相性も良くて、私達は官能小説のようなスリルのある場所、場面でセックスすることを望んだ。妹の目を盗み、リビングのソファで、あるいは夜静まり返った部屋で、まるで官能小説のような逢瀬を重ねるようになった。
『お盆にそちらに行きます』
その連絡を入れてからというもの、私は秀隆くんのことばかりを考えていた。彼の愛撫、男にしかない欲望の槍が私を貫く快感を思い出し、一人の夜を悶々と過ごしていた。
今日からまた、あの秘密の夜が確実に始まる。前を歩く私を見つめる彼の胸中で、抑えきれない情欲が激しく燃え上がっているのが、背中越しに伝わってくるようだった。
そして迎えた再会の日。玄関の扉を開けると、そこには出迎えてくれた妹と秀隆くんの姿があった。
「美香姉、いらっしゃい。暑かったでしょう」
無邪気に笑う妹に対して、「ええ、ほんまやわ。暑いな」と微笑み返す。
「冷たいもの、すぐに用意するね」
妹がキッチンへと向かい、私たちに背を向けた。
「いらっしゃい、義姉さん。長旅、疲れたでしょう」
「秀隆くん、久しぶりね、今日から少しだけお邪魔するわね」
(ああ、彼だ……)
視界に映る彼の身体の輪郭が、脳裏に焼き付いていた濃密な情景を呼び覚ます。
「荷物、客間へ運びますよ」
彼が私のカバンに手を伸ばした時、彼の手が意図的に私の指先をなぞるように触れた。ビクッと肩を震わせた私に、彼は顔を近づける。
「……ありがとう」
「……待ってましたよ。義姉さんが来るのを」
奥の部屋に引っ込んだ妹には決して聞こえない、熱を帯びた低い声とハッカのような匂いの息。その甘い響きと指先の接触は、「今夜、あなたの部屋で…」と語りかけているように聞こえた。
些細な諍いから、彼らの間では長いこと夫婦の夜の営みが途絶えているらしい。そういう私も、独り身の寂しさの中で、女としての盛りを迎えながら男の肌に飢え、満たされない欲求を抱えていた。
私たちは互いに、ぽっかりと空いた心の隙間と肉体の渇きを埋めるように惹かれ合った。一度肌を合わせれば、背徳感などどこかへ吹き飛び、ただ欲求を満たすだけの濃密な時間が私たちを支配した。私の中に眠っていた激しい情欲が呼び覚まされ、彼の逞しい腕で抱かれるたびに、私は女である喜びを実感した。
性癖や身体の相性も良くて、私達は官能小説のようなスリルのある場所、場面でセックスすることを望んだ。妹の目を盗み、リビングのソファで、あるいは夜静まり返った部屋で、まるで官能小説のような逢瀬を重ねるようになった。
『お盆にそちらに行きます』
その連絡を入れてからというもの、私は秀隆くんのことばかりを考えていた。彼の愛撫、男にしかない欲望の槍が私を貫く快感を思い出し、一人の夜を悶々と過ごしていた。
今日からまた、あの秘密の夜が確実に始まる。前を歩く私を見つめる彼の胸中で、抑えきれない情欲が激しく燃え上がっているのが、背中越しに伝わってくるようだった。
そして迎えた再会の日。玄関の扉を開けると、そこには出迎えてくれた妹と秀隆くんの姿があった。
「美香姉、いらっしゃい。暑かったでしょう」
無邪気に笑う妹に対して、「ええ、ほんまやわ。暑いな」と微笑み返す。
「冷たいもの、すぐに用意するね」
妹がキッチンへと向かい、私たちに背を向けた。
「いらっしゃい、義姉さん。長旅、疲れたでしょう」
「秀隆くん、久しぶりね、今日から少しだけお邪魔するわね」
(ああ、彼だ……)
視界に映る彼の身体の輪郭が、脳裏に焼き付いていた濃密な情景を呼び覚ます。
「荷物、客間へ運びますよ」
彼が私のカバンに手を伸ばした時、彼の手が意図的に私の指先をなぞるように触れた。ビクッと肩を震わせた私に、彼は顔を近づける。
「……ありがとう」
「……待ってましたよ。義姉さんが来るのを」
奥の部屋に引っ込んだ妹には決して聞こえない、熱を帯びた低い声とハッカのような匂いの息。その甘い響きと指先の接触は、「今夜、あなたの部屋で…」と語りかけているように聞こえた。

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