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Dilemma
第3章 【同期入社の戦友、眼中にもなかった同僚】
自然と手が伸びて前髪に触れる
そしたら黒田の瞼が開いて目が合った
「あっ…おはよう」
「おはよ、身体、大丈夫?」
「うん、昨日はごめん、めっちゃ酔ってたよね」
「うん、運ぶの大変だったー」
「ほんっとごめん」
しゃがみ込んでる私の前髪をくしゃっとして
ハハハと洗面台へ消えた
すかさず追い掛けていく
背後から覗き込んで
「変な事言ってなかった?私」って再度確認
「変な事って?」
「いや、ほら、いつもなら言わないような事」
「うーん、俺にとっては全部がいちいち可愛かったから成瀬にとってどれが変な事なのかわかんねぇや」
「あっそ、なら良いや」
聞いてるこっちがいつも恥ずかしくなる
その場を離れようと背を向けた瞬間
「あ、でも昨日のキスは……お前からだからな?」
「えっ!?」
思わず振り返り眉間にシワを寄せる
怪訝な顔つきになる私をまたヘラヘラと笑う
これは、誂っているのか
はたまた真実なのか
顔を洗い、歯を磨いた後の黒田に
「思い出させてやろうか?」と言われる
後退る私はあっという間に壁ドン状態
「記憶ないとか許さないよ、俺」
「お酒は……控えます」
そう言った私の腕を取り、自分の首へ回させる
「忘れた?昨日、こうやって俺を離さなかったのに?」
「へ…?ウソ」
「ウソじゃねぇよ、酔ってるのわかってたから襲わなかった俺を褒めて欲しいくらい」
「ほ、ほんとに?ご、ごめん…」
「謝るな、俺にとっては全部大事な記憶だから」
ぐっ…と近付いてきて見上げる顔
腕は下ろすのを許してくれない
目線も外せない……
「忘れたなんて言わせない、思い出せ、こうやって俺をずっと煽ってきてたんだからな」
「わ、わかんない…っ」
強引にも重なる唇が私を捕らえて離さない
無理やりだったけど、絡む舌は優しくて
全身の力が抜けていく
抵抗しようとした手も握り締められて
そのまま……

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