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『帰り花の夜に』~義母の静謐なる背徳
第2章 義息~超えてはいけない境界線(1)
三年前の十一月、私は誕生日を迎え、48歳になった。

「50の大台ももうすぐね」と、半ば気落ちすることもあった。けれど私は、一年のうちでいちばん冬が好きだ。十二月になればクリスマスが来て、すぐに正月がくる。来るべきイベントのことを考えるだけで、胸がワクワクする。

今年もいつものように、クリスマスから正月にかけて、家を離れた子供たちが帰省してくる。我が家は一気に賑やかになる。大学生の長男は、自宅が居心地がいいのか、彼女がまだいないせいか、冬休みに入ると速攻で帰ってくる。

私の名前は美香。私が結婚したのは二十四歳。私よりも若くして結婚した長女・葉月が、結婚相手を連れて三泊の予定で年末に帰省してくるということになり、私は自宅の大掃除や年末の締め行事、年始の準備にほぼ休む暇なく、せっせと体を動かした。

特に自宅が広いことも手伝って、大掃除は一年で一番の大仕事だった。二台のルンバがせわしなくリビングを動く中、三日間かけた大掃除はようやく終わりを迎えようとしていた。

医師である主人の経営する医院も、昨日から年末休みに入った。昨日は珍しく朝早く起きて、ガレージの掃除と愛車磨きに勤しんでいたが、今日はまだ眠りの中だろうか。二階の寝室のドアは、閉まったままになっている。

空は晴れ、初冬にはめずらしいやわらかな日射しが、自宅前を流れる清滝川の川面に反射し、万華鏡のような光の模様を描きだしている。私は底冷えのする朝、愛犬の散歩に出かけた。

閑静な場所のために道行く人もなく、日差しは道路に人影を移すことなく、アスファルトを燦燦と照らしている。吐いた白い息が空中に舞い、すぐに霧散していく。愛犬も暖かい家の中があまり居心地がよくなかったのか、ハアーハーと息をつきながら、私の持つリードをいつもよりも力強く引っ張って歩いている。

愛犬がマーキングをした電柱を見ると、根本に小さな花が咲いているのに気づいた。この季節に咲く花は珍しく、後で調べてみると「帰り花」とか「忘れ花」というらしい。
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