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素敵な笑顔
第1章 音 清らかな音



 そのひとは、いつもおばあちゃんのそばにいた。

 表情はまったくわからない。
着ているものも、わかるのは色がグレーってことだけで、
それがスーツなのかスウェットなのかもよくわからない。
すりガラスを通して見ている感じで、
体格と立ち姿でなんとか男のひとだとわかる。
わたしの霊感なんて、その程度だ。

いつも一緒にいても、どんなに近くにいても、
埋められない寂しさを抱えているようだった。
まるでおばあちゃんの感情が、具現化されているように。
おばあちゃんもまた、
いつも悲しみの雨に打たれているような、
全身ずぶ濡れの姿に見えたから。
たとえ、笑顔を見せてくれているときでも。

 おばあちゃんはいつも、
素敵な笑顔を見せてくれていた。
それなのに、わたしの思い出のなかでおばあちゃんは、
一度も笑ったことがないような、
沈んだ表情を浮かべている。
わたしに向けてくれていた笑顔の裏側に、
おばあちゃんはそんな感情を隠していた。
いくら温かく重ね着をしても、
凍える心は安らぎを失ったまま。
そんな寂しさ、悲しみ。
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