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素敵な笑顔
第6章 詩 記憶:マイノリティ
 同じクラスで、あたしの一個前の席に座った紗絵は、
いつもにこにこしていた。
授業中、いきなりがばっと振り返ったと思ったら、
半身をひねったままあたしのノートに、
寝てた、ちょっといびきかいてたかも、ごめんね、
と書いたのだった。
まだ仲良くなる前のことで、あたしは驚き、
紗絵のその子どもっぽさに、屈託のなさに、無防備さに、
美咲さんへの想いでぐちゃぐちゃに絡まっていた気持ちは、
不意をつかれたように、ほどく必要すらないまま、
どこかへ飛んでいってしまった。

 それからも紗絵は先生の目を盗んでは、
ねむいねえ、とか、はらへったー、とか、
なに言ってるかさっぱりわからん、とか、
他愛ないことを色々と落書きをしていった。
美咲さんへの想いの残滓が完全に消えてしまうまで、
一月とかからなかった。

 好きになったらいけない。
好きになっても報われない。
好きになってもつらいだけ。
そう何度も言い聞かせたのに、
あたしは聞き分けがなかった。
紗絵の背中。紗絵の声、紗絵のあくび、
紗絵のため息、紗絵のくしゃみ、
全部好き。
大好き。
あたしのノートに落書きするときに、
あたしの腕の上に乗る紗絵の腕の重み、
温かさ、丸っこいかわいらしい文字。
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