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第34章 Lesson お引越し

「ははは〜！琴海はこの車がヤナセのって知ってたんだ！」

なんだか楽しそうにセイジが笑うから、内心ホッとした。

「うん…健康診断受けに行ったの…その時に乗せて貰ったから…」

「そっかぁ〜俺もスクールの寮だから、車は実家に置きっ放しになってて、今じゃ妹が乗り回してるんだよ。税金は俺が払ってるんだけどね」

左折カーブを綺麗に曲がり切った後で、セイジは冗談ぽく言いながら肩を竦めた。

「実家で妹さんが…」

あぁ…セイジの妹さん…
懐かしいなぁ〜。

カフェでセイジの恋人のと勘違いした時が、今では遥か遠い昔に思えてしまう。

それからセイジは、ヤナセの車に乗ってきた経緯を気さくに話していく。

「実家に戻ると何かと面倒だから、ヤナセが貸してくれたんだよ。いつもスクールの地下に停めたままだし、たまには運転しないとってさぁ〜」

「ヤナセ、余り普段乗らないんだ？」

「う〜ん…乗ってる暇も無いと思う…多分スクールで、今一番忙しいのヤナセだと思うし…」

「一番…忙しい…」

私の前…いや、生徒の前にはそんな素振りは微塵も見せてないだろう。

実際、喫茶店に時たま来てたりしたし…
あ…でも…
ワタリや姉さんほど頻繁には、来てないか…。

も、もしかして…スクールで寝泊まりしちゃったりしてるのかも！

車一台の話しから頭の中でヤナセ様の日常が、ビックバン並みに広がっていく。