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純喫茶レモン Moonlight
第1章 恋人になる夜
そして、閉店後。

和子はすでに退勤し、渚は休みだった。

「ふぅー、忙しかった」

「お疲れ様です。紅茶でも淹れましょうか?」

「お願い」

円香がそう言うと、直樹が紅茶の缶を選び、お湯を沸かし始めた。

沸かしたお湯をポットに入れ丁寧に紅茶を淹れる。

「今日はアールグレイにしました」

そう言って直樹はマグカップをカウンターに置いた。

アールグレイの香りが、静かな店内にふわりと広がった。

「……」

「……」

時折、カップを置く小さな音だけが店内に響いた。

「店長は……」

直樹が口を開いた。

「何……?」

「店長はなぜ、僕を雇ってくれたんですか?」

「え?それ聞く?」

円香はいきなりの質問に拍子抜けした。

「僕はレモンにとって必要な存在なのかなと思って」

「必要だよ……レモンにとっても……そして私にとっても」

「……」

直樹は何も言わなかった。

「……何?」

「いえ……」

直樹は少しだけ視線を落とした。

「それは、店長としてですか?」

「……え……」

円香が答えに詰まると、直樹が言った。

「……僕は円香さんにとって必要な存在ですか?」

胸が高鳴った。

周りの音が、すっと遠のいていく。

聞こえるのは、自分の鼓動だけだった。

円香はどう答えていいのか迷った。

「必要だよ。私は直樹さんが必要。レモンだけじゃなくて……これからも」

直樹の顔をまともに見られなかった。
頬が熱くなっていくのを感じた。

それでも、そっと視線を上げる。

直樹は驚いたように円香を見ていた。

「直樹……さん……?」

「それって……その、好きってことですか?」

円香は黙ったまま頷いた。
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