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明君のお母さんと僕
第5章 柱の観音様
「また、キスがしたいです」
 これが僕の中にある真っ先の欲望だった。言ってから、急に恥ずかしくなった。
 明君のお母さんにしても予想外の返答だったみたいで「え?」と声に出して驚いていた。だけどすぐに「いいよ」と言って、僕のほうにぬぅーと顔を近づけてきた。
 明君のお母さんはいつもフルーツのような甘い匂いがする。
 キスをするとき、その匂いが濃くなって鼻腔に入ってくるのでいっそう幸せだ。
 明君のお母さんの柔らかい唇が僕の唇に張り付いてくる。
 グミに似た感触で僕は思わず食べたくなる。
 先週の土曜日に初めてキスをしたけど、その時はキスをしたという感動が強すぎて、唇の感触をしっかりと味わう余裕もなかった。
 僕は自分からも唇をもぐもぐと動かした。
「んふぅ」
 明君のお母さんは息苦しそうにくぐもった声を漏らした。僕はその声が可愛いと思う。
 だけど明君のお母さんは始めこそ唇を合わせる程度だったのに、突然、僕の唇をこじ開けるようにして、ヌルリと舌を差し込んできた。
 僕は舌を入れられるキスなど初体験なので正直、戸惑った。
 一応の知識でディープキスは知っているけど、実際に舌を差し込まれると、どう対応していいのか分からない。それでも男の意地というか見栄というか。僕だってディープキスが出来るんだ、というところを見せたくて、ベーッと舌を出してみた。
「ちゅぱ、んんっ」
 明君のお母さんは僕の舌を吸い取るように、自分の唇で挟んできた。
 僕の舌を吸い込みながら、明君のお母さんは自分の舌を絡めてくる。
 口の中で2匹の小さな蛇が絡みついて取れなくなったみたいだ。
 うわ、すごくイヤラしい。
 一枚も二枚も上手な明君のお母さんのキスに僕は圧倒されながらも、ゾクゾクする。
 何よりも学校では「嫌われ者」の僕の唾液まで吸ってくれる人がこの世にいたのだ。
 僕にはそれが嬉しい。だから、ずっとこの時間が続けばいいと思う。
 ヌチャ、ニュチ、ペチョ……唾液と唾液がまじりあう音にもウットリしてしまう。
 目を閉じそうになるけど、この貴重なひと時を一瞬たりとも見逃したくなくて、僕はずっと明君のお母さんの顔を見ていた。目を閉じている明君のお母さんは睫毛がすごく長かった。
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