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明君のお母さんと僕
第7章 行水
<昭和58年8月9日・木曜日>の日記を書き終えて僕は「前代未聞だ!」とひとり満足気に呟いた。
 この日起こった出来事は、日記帳を5ページにも及んだからだ。これは前代未聞である。
 8月9日は長崎に原爆が投下された日。
 そんな日に心をときめかせて夢中で日記を書いているなんて不謹慎かもしれないが、それでも僕は一生に一度しかない思い出をしっかりと記録しておきたかった。
 しゃぼんのような清潔な匂い、滑らかな肌触り、裸で抱き合った時に感じた体温。
 年上の女性のマシュマロのように柔らかいおっぱい。
 そして僕の体の一部が、明君のお母さんの体の中に入って、精子をいっぱい出したあの瞬間の全身が震えるエゲツない快感。
 明君のお母さんは僕が射精する直前、小さな声で「イクッ」と口走っていた。
 あの時の明君のお母さんは、五歳ぐらいの女の子が大声で泣き喚いているみたいだった。女の人はSEXで気持ち良くなると、どんなに大人ぶっていても少女みたいに戻るみたい。
 大丈夫だよ、と優しく声をかけてあげたくなるぐらい可愛かった。
 だけど僕はひとつだけ日記帳に書かなかったことがある。
 明君のお母さんの右の目の上、紫色に変色した痣のことは僕だけの秘密日記の中でも触れることができなかった。

★

 翌日の昼下がり。僕はいつものように宿題を詰めた鞄を肩から下げて、家を出た。ただ今日は荷物が一つ多い。家の裏庭の物置に立てかけていた虫取り網も持ってきたのだ。
 実は昨日、明君のお母さんと初めてSEXをした後、しばらくリビングの床に仰向けに寝そべってお喋りをした。
「そういえば善三郎君はよく明と虫取りをしていたわね」
 明君のお母さんは思い出したように言った。
 突然、明君の名前を出されたので僕は少し複雑な気持ちになったが、
「うん。カサドノ公園でよく蝉を取っていたよ」
 当時この公園ではある事件が起こっていたのだが、いまは関係ないので触れないでおく。
「そっかぁ。オバサンも一度、蝉を取ってみたかったなぁ」
「そうなの? 僕、虫取り網持っているよ」
「じゃあ明日、お天気だったら、オバサンと蝉取りにいく?」
 明君のお母さんは僕のほうに体を向けてやる気満々な感じで誘ってきた。その勢いに押されて僕は「うん、いいよ」と返してしまった。
「ほんと? 一緒に行ってくれるのね」
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