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ドラゴンの潜む山
第1章 ドラゴンの潜む山

「穂乃果ちゃん。今帰りかい?」
「金子《かねこ》さん?」

 田んぼに挟まれた通りを走り出してすぐ、白髪姿の腰の曲がった老人に出会った。近所に住んでいる人だ。

「そうだ、サツマイモは好きか? さっき採れたやつだ。柿も食うか? こっちは甘柿、こっちはちょっと渋いから、干すといい」
「あ、ありがとうございます」
「お母さんは元気かい? 最近あんまり見かけないねぇ。前は畑でよく会ったけど」
「……そうなんですね」

 穂乃果は立ち止まった。話好きな金子という男は、一度捕まると長い。
 下げていた袋にサツマイモ、柿を入れてくれていたが、話し出すと手が止まったままなかなか進まず、なんなら柿も一緒に入れられているのでどれが甘くてどれが渋いのかわからなくなっていた。三個ずつくれるらしい。さらに言えばサツマイモは穂乃果の家でも作っている。採れすぎて、先日美桜の家に差し入れたばかりなのに。

「じゃ、お母さんによろしくねぇ。寒くなってきたから、風邪引かないようにねぇ」

 ようやく終わったかに思えたが。

「あ、そういえば隣の畑の鈴木《すずき》さんがな……」

 まだらしい。

(鈴木さんて誰だっけ?)

 浮かんだ顔は二つ。どっちだっけ? と思う。

「金子さん。ほら、なんか曇ってきてません?」
「あ、本当だな! こりゃ、ひと雨来そうだ。雨が降る前に帰りなさいね」

 サツマイモと柿が入ったビニール袋を穂乃果に渡すと、金子は小走りで帰っていった。
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