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ドラゴンの潜む山
第1章 ドラゴンの潜む山
「やめとけって。いいじゃんあんなやつ居なくたって」
男子生徒の声がして、一年生のクラスからもう一人出てきた。穂乃果の知らない子だ。
「でも、花井先生もうすぐ産休に入っちゃうんだよ? 一年ちょっと会えないから、みんなでこっそりプレゼントあげようって話してたじゃん。日曜にそのプレゼントを選びに行こうと思って誘ったのに」
(そういえば)
一年の担任である花井が産休、育休に入るのは、穂乃果も聞いて知っていた。
大切な誘いだ。
「……なんだよ、ドラゴンを探しに行くって」
男子生徒は苛立ったように呟く。
「意味わかんね」
「絵とか描いてるよね、休み時間」
「ああ、あの真っ黒いやつ」
穂乃果の心臓は、バクバクと鳴っていた。
美桜がドラゴンの絵を学校でも描いていること、初めて知った。
「ーーなんかやっぱ変だよね、あの子」
佐山は眉間に皺を寄せ、腕を組みながら軽く首を傾げてみせた。男子生徒も頷いている。
「この前一週間学校休んでたじゃん? 中学の時も同じ時期に休んでたよね、確か」
「そうだっけ?」
「うん。わたし、入院してるって噂聞いたことある。もしかしてビョーキなんじゃ……」
「ねえ、日曜何時!」
穂乃果はたまらず二人の会話に割って入った。
「え……?」
ぽかんと、一年の二人は会話を打ち切り穂乃果の方を向く。
「ごめんさっきの会話たまたま聴こえちゃって。美桜んち近いから伝えとく。花井先生へのプレゼント、買いに行くの日曜日の何時?」
穂乃果がそれを聞くのは、おせっかいだし出しゃばりすぎだとわかってはいた。だが美桜へのマイナスな言葉達をこれ以上聞くのは嫌だった。
「十時に、集合する予定です。場所は」
穂乃果はスマホのメモ機能に二人からの情報を打ち込んだ。
「急にびっくりさせてごめん、美桜に伝えとくから」
それだけ言い、廊下を駆け出す。美桜が帰って十分も経ってない。まだ美桜はすぐ近くにいるはずだった。

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