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ドラゴンの潜む山
第1章 ドラゴンの潜む山
血は流れていない。代わりに無数の部品が見えた。剥き出しになった回路基板や配線、銀色のモーターや、大きさの違う歯車や絡まり合った白い紐状の繊維、美桜を構成している人工物たちは、雨水に濡れてしまっている。
「しっかりして、美桜……っ」
頭を抱き起こし、揺すった。美桜の目にはいつもの輝きがなく、瞬《まばた》きもなかった。
どうにかして、連れ帰らなければ。
穂乃果は丁寧に美桜の頭を地面に下ろした。千切れた腕を広い、泥を手で払う。機械は、濡らしてはいけないのではないか。カバンに入れようとしたが、カバンを美桜の家に置いてきてしまったことに気付く。
しかたなく、びしょ濡れのセーラー服の中にしまった。美桜の腕の、人工皮膚の感触が素肌に伝わる。濡れて、冷たかった。
穂乃果は必死に美桜を運ぶ方法を探す。持ち上げようとしたが、無理だった。そうしたらおぶるしかない。
どうにか抱き上げ、降りてきた崖にもたれさせるように、美桜の体を座らせた。服の中から腕が落ちる。それを広い、右の脇に挟み、美桜の体の前に屈んでなんとか背に乗せようと試みる。
ダメだった。意識のない美桜の体は右側にずるずる傾いて、穂乃果の背に体重を預けさせることができない。
もう一度起こして岩壁にもたれさせる。今度は左に倒れた。
「美桜……起きてよ美桜……」
いつも温かいのに、美桜の汚れた頬は冷たい。きっと濡れたせいだけじゃない。
穂乃果の目からこぼれた塩水は、すぐに雨水に洗い流された。
美桜の腕がまた落ちた。構わずに、美桜に背を向け再び屈んだ時だった。
「ほのちゃん……?」

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