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ドラゴンの潜む山
第1章 ドラゴンの潜む山
美桜の声がした。
「美桜」
穂乃果ははっと顔を上げた。美桜に背を向けた状態のまま、投げつけるように言う。
「あたしの体に掴まって! おぶって下まで降りるから」
「……あたし、普通の女の子より重いよ」
「大丈夫……だからお願い、掴まって。あたしの背中に乗って……」
それしかもう方法がない。声が震え、視界がぼやける。必死に哀願した。
美桜は言われた通りにした。左腕を巻き付けてくる。美桜の体重が穂乃果にかかり、よろけた。それでも必死に踏ん張り、腕を拾って立ち上がった。
確かに美桜の体は重かった。小柄な体なくせに、穂乃果よりもずっと重い。
それでも、必死に歩いた。
崖は登れない。違うルートで山を降りなければ。
「あたしがほのちゃんと違うって、バレちゃったよね?」
「……昔から知ってたよ」
「え?」
「美桜、痛くない?」
「うん……でも力があんまり入らない。歩けない、ごめんね」
穂乃果は首を振った。その言葉を言わなければいけないのは、きっと自分の方だ。
穂乃果は歯を食いしばり、一歩、一歩と、進む。
その間も絶えず雨が打ちつけ、穂乃果の体温を奪っていく。
「ねえ、重かったら置いてっても大丈夫だよ」
「いいから、美桜は祈って」
掠れた声でそう伝えた。
「大好きなドラゴンに、助けてって」
「う、うん」
穂乃果もドラゴンを思い浮かべようとした。美桜が描いた絵ばかりが浮かぶ。
真っ黒いドラゴン。赤や黄色やオレンジのドラゴン。そして穂乃果のために描いた、額に入ったレインボーのドラゴン。
ーー美桜を助けて。
願わずにはいられなかった。信じてないのに、勝手なのはわかってる。
それでも穂乃果は全身全霊で願った。
どうか、どうか美桜を助けて。大切な友達なの。

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