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ドラゴンの潜む山
第1章 ドラゴンの潜む山
『素敵じゃない』が口癖な担任は、基本生徒のやりたいことを肯定してくれる。
田舎の小さな学校は、少人数ゆえに教師と生徒の距離も近く、生徒同士の仲間意識も強かった。学校だけじゃなく、近所の人たちもそうだ。すれ違えば挨拶を交わし、採れた野菜や捕獲した獣の肉を分けてくれたりする。変わりに何か別の物を返し、コミュニティができている。
閉鎖的な田舎のコミュニティはそこの暮らしに慣れたものには居心地がいい。穂乃果にとってもそうだった。物心ついた頃から、物々交換や井戸端会議で誰彼構わず言葉を交わした。みんな顔見知りみたいなものだった。だからこそ、この小さな町を出て、まったく新しい土地で初めましての人と一から人間関係を築いていくことが不安なのだ。
「すぐに新しい環境にも慣れるよ。ボーイフレンドもできるんじゃない?」
「そういうのはまあ、置いといて」
ボーイフレンド、という言い方に若干の古めかしさを感じ、穂乃果は小さく首をかしげた。死語ではないのか。新井は三十代前半の女性教員だ。年代的に違和感があったが、この前ホームルームで昔のドラマを観るのにハマってる、と言っていたのを思い出し、穂乃果は一人納得した。
言葉は、大事だと思う。言葉を相手に合わせるだけで、様々なものを共有できているような気がするから。流行だったり、価値観だったり。
閉鎖的なコミュニティは仲間でいるうちは居心地がいいけれど、そこから外れてしまうと行き場がない。
「まあ、とりあえず家族ともお話してみて」
「うん、そうする。ありがとう先生」
穂乃果は頭を下げ、教室を出た。

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