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その足に頬を寄せたい
第1章 その足に頬を寄せたい

 僕の息はまるで百メートル走のあとみたいに上がっていた。
 全身が心地よい疲弊感に包まれている。
 夢のような時間だった。
 吐き出したものを手早く片付けてくれたあと、アゲハは笑った。

「お疲れ!」

 彼女の声に顔を上げる。さっきの飲み会の時みたいだったからだ。
 アゲハの時の色香はどこに消えたのか、ノリが良くて気さくな朋子がそこにいた。
 ふいに僕は我に帰ったように、朋子の服装が気になった。
 上はやはりボンテージ服で、今は白シャツも脱いでいる。賢者モードの状態だと、ただただ恥ずかしかった。

「引いてない?」
「どうして? あたしから誘ったのに」

 朋子はクスクスと笑った。

「智こそ、引いてない? あたしがSMクラブで働いてるって知って」
「びっくりは、したけど」

 朋子はあはは、と声をあげて笑った。

「誰にも言ってないから、秘密だよ。地元の同級生にも、達紀にも」
「い、言わないよ」

 ばっと顔をあげ、また伏せる。

「でも、なんで僕に」
「ん? なんとなく。人に言えない秘密を隠して過ごしてるような気がして、ぱーっと解放させてあげたいなって、思っちゃって」
「それってどういう……」

 尋ねる前に、朋子は冷蔵庫に消えた。

「あ、水がある。二本。智も飲む?」
「うん」
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