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ヒミツのカルテ
第1章 咲希(32)不感症?

「ありがとうございます。では、今日から少しずつ、実際にお身体に触れながら感覚をカウンセリングしていきましょうね」

川島医師の穏やかな声に促され、咲希はうなずいた。

「では、前回同様に、奥のスペースで下着をとってガウンに着替えて、またこちらの方へ戻ってきてくださいね。お待ちしています」

カーテンの奥へと進み、前回と同じように服を脱ぎ、柔らかなガウンに身を包んで戻ってくると、丸椅子が用意されている。

「お疲れ様でした。では、こちらの丸椅子に腰かけてくださいね」

川島に促され、咲希は緊張を少しだけ滲ませながら丸椅子にそっと腰を下ろした。
背もたれのない椅子に座ると、自分の身体がむき出しになったような心細さがよぎるが、目の前の川島は変わらぬ温かい眼差しを向けてくれている。

「ありがとうございます。では、今から私が、お身体にゆっくり触れていきますね」

川島はそう言うと、まずはガウンの上から、咲希の肩や背中、そして腕や腰のあたりへと優しく手を這わせた。
医療的な冷たさや機械的な動作ではなく、まるで温度を確かめるような、ゆっくりとした優しいタッチだった。

「どうですか? ガウンの上からですが、こうして触れられる感覚は……」

川島の声がそっと響く。

「怖い、痛い、気持ち悪いなど、少しでもネガティブな感情や違和感があったら、遠慮なく何でも言ってくださいね。我慢しなくていいですからね」

「……大丈夫です、怖くないです」

咲希は少しだけ肩の力を抜き、正直な感想を言葉にした。
ガウンの上からそっと触れられる感触は、拒絶したくなるような不快なものではなく、むしろじんわりと温かさが伝わってくるようだった。

それを聞いた川島医師は、安心したようにふっと柔らかく微笑んだ。

「そうですか。よかったです」

川島の手は、優しく肩をなでるのを終えると、一度そっと離れた。
そして、穏やかなトーンで次のステップを告げる。

「…では、次は少しだけステップを進めてみましょうか」
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