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ヒミツのカルテ
第1章 咲希(32)不感症?
「次は、咲希さんの後ろ側に回って、ガウンの上からお胸を触りますね。嫌だったら、すぐに仰ってくださいね」
川島医師の静かで丁寧な事前確認に、咲希はゴクリと唾を飲み込んだ。
「お胸を触られる」という行為そのものが、過去のトラウマやプレッシャーと直結している。緊張で再び心臓が跳ね上がり、背筋がこわばるのが自分でも分かった。
それでも、逃げ出したい恐怖とは違う、「向き合いたい」という小さな意志を胸に、咲希は小さくうなずいた。
「……はい」
トコトコと足音がして、川島が咲希の背後へと回る気配がする。
次の瞬間、そっと後ろから手が伸びてきて、ガウンの上から咲希の胸のふくらみを包み込むように触れられた。
ビクリと咲希の身体が硬直する。
しかし、川島の手は急な刺激を与えることはせず、最初は乳首を避けたまま、ふっくらとした胸の丸みをゆっくりと、まるで雪を溶かすように優しく、丹念に撫でていった。
「……どうですか? 苦しくないですか?」
背後から聞こえる川島の声に、咲希は息を潜めながら自分の身体の内部に意識を向けた。
拒絶反応や気持ち悪さは、不思議と起きない。
ただ、他人に触られているという緊張感で、胸のあたりが熱くなっているのを感じる。
「……大丈夫です、怖くないです」
少し掠れた声だったが、咲希ははっきりとそう答えた。
背後から差し伸べられた川島の手は、急かすことなく、ただ一定の優しいリズムで咲希の胸のふくらみを撫で続ける。
室内に響くのは、心地よい音楽と、川島の手がガウンの布地をかすめる「シャリ、シャリ」という微かな擦れ音だけだった。
その音と、背中越しに伝わる一定の温もりに包まれているうちに、先ほどまで張りつめていた咲希の肩の力が、ほんの少しずつ抜けていく。
川島の手の動きはどこまでも配慮に満ちていた。
乳首や、神経が過敏に反応してしまうデリケートな部分には決して触れず、ただ丸みに沿ってふんわりと包み込むように、そして円を描くように優しく撫でられている。
傷つけられる心配のない場所で、ただ「触れられること」を受け入れる時間。
(……あたたかい、かも……)
恐怖や焦りではなく、ただ心地よさと、自分の身体がゆっくりとほどけていくような不思議な感覚が、咲希の胸を満たしていく。

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